あたまの中の栞 - 皐月 -
川の流れる音が聞こえてくる。澱みなく、スラスラと落ちていく、川上から川下へと緩やかに。私は水の流れる音が好きで、その感触を確かめたくてそっと手を伸ばしたのに、その冷たさに思わず条件反射的に手を引っ込めてしまう。何事も手を伸ばさないと、その感触はわからないと思った。
鯉のぼりがゆらゆらとたなびく姿を見たときに、彼らがそのまま川に落ちて力強く泳ぐ様を想像し、空を眺めると川の色と違わぬ蒼、時折流れる雲の姿に水が流れていく景色を思い浮かべた。この季節はとても空気が変わりやすく、