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就職面接で人の本質がわかるわけがない――『六人の嘘つきな大学生』の感想・レビュー
浅倉秋成 著
『六人の嘘つきな大学生』
どこの書店でも平積みされている、色々な賞も獲得している、話題の一冊。
Amazonレビューもやたら多いし、気になっていたので読んでみた。
朝の4時まで、ぶっ通しで読んだ。一気読み。
(おかげで、寝不足で出勤)
■ 有り得ないのに、無理やりな感じが一切ない
![6人の嘘つきな大学生](https://assets.st-note.com/img/1710125065008-Se2pW7ayhR.jpg?width=1200)
読んだ感想としては、「非の打ち所がないな」と。
緻密で、綿密。一つ一つに意味を持たせ、神経質に思えるほど、無駄がない。
「ここ変じゃない?」「この部分、ちょっと無理やりすぎない?」
ということが、ミステリーを読んでいるとよくあるけど、この小説では、そういったツッコミどころがほとんどなかった。
「就活において、このような事件、事態は、実際には有り得ないだろう」──リアリティがない。
しかし、リアリティがないにも関わらず、違和感がない。
こんなの有り得ないのに、無理やりな感じがしない。
これってスゴい小説のテクニックだと思う。
「辻褄を合わせようとして、ツッコミどころが生じてしまう」、そんな“小さなつまづき”が一切ない。“ありえない”物事が、自然と運ばれていく。
当たり前だが(めちゃくちゃ当たり前のことですが)、普通の一般人では書けない。まさに“プロ”の書く作品である。
■ 面接で、その人の本質などわかるわけがない
内容についてはどうだったか。
「月には表と裏がある、人間もまた、一側面だけではない。
一つの側面だけで、その人を判断してはいけない。
というか、そう易々と『その人の本質は見抜けない』、
その人を判断することなどできるはずがない。
よって、数時間の採用面接なんて、はなから不可能なことをやっている」
そういった内容なのですが、これについては、「まぁそうだよね。再確認させていただきました」という感じ。
たくさんの“いいね”がつきそうな、とある社会人のウィットなツイート程度の内容。純文学的な深みは感じられなかった。
勿論、「だからダメ」というわけではない。
大切なことを訴えかけている、重要なことには違いない。
確かに、間違いなく、
『就活の面接で、その人の本質などわかるわけがない』。
当たり前のことだが、こんな当たり前のことを、就活生も、そして採用側も、再確認せねばならない。
作品のなかで、次のような場面、人が出てくる。
「メールの返信に1.5時間かかる」女性社員(鈴江)。
採用面接のときに、「眠いな」「たるいな」と口にする男性面接官。
最初、これには違和感があった。
「これだけ入社希望の多い一流企業に、まして高難度の採用面接をクリアしてきた人の中に、このような人はさすがにいないんじゃないか?」
しかし、読みながら途中で気付いた。
『就活の面接で、その人の本質などわかるわけがない』
だからこそ、このような社員がいるのだと。
面接で、まったく見抜けていない。見抜けず、入社を許している。
やはり「数時間の面接で相手のことなどわかるはずがない」、彼ら(彼女)は、まさにそのことを裏付けている。
***
読み終えて、“大どんでん返し”という印象はなかったけど、次の展開がどうなるのか、最後まで気になる作品でした。
ちなみに今回、私が読んだのは文庫版なのですが、
巻末の解説で、著者、浅倉さんの“小説の組立て方”が少しだけ載っている。
「えっ!こんなところに、こんなこと書いちゃっていいいの!?」と驚いた。けっこう驚いた。
「これだけ完成度の高い小説を書く人は、一体どのようにして書いているのか」と、気になっていたら、いきなり巻末にそれが書かれていて、これは貴重、実に太っ腹だと思った。
私は小説を書いているわけではないので、直接関係はないのですが、普段、小説を書いている人は参考になると思う。
以上、感想でした。
ではまた。