パンチラインで攻める作品――朝井リョウ『正欲』の感想
朝井リョウ『正欲』を読み終えた。
表紙の帯に、“読む前の自分には戻れない――”とあったが、これは確かに、価値観を揺さぶってくる一冊である。
“多様性”が叫ばれる昨今、しかし、「何か違和感があるんだよなぁ」と思っていた人は多い。その違和感を言語化し、さらにはこれまで“一般”であり、“普通”であると思っていたことを、マイノリティ側の目線からバラバラに分解する。
ストーリーの中に、ちょっと無理があるなぁと思う箇所もあったが、随所に名文が散らばっている、パンチラインで魅せる作品