1936年のナチスに対しての熱狂から学ぶ「この夜を越えて」
<文学(115歩目)>
時代が大きく変わるとき、それは熱狂とともにやってくる。
この夜を越えて
イルムガルト・コイン (著), 田丸理砂 (翻訳)
左右社
「115歩目」は、イルムガルト・コインさんの作品集。
イルムガルト・コインさんは1905年生まれ、1936年時は31歳の若者として、ヒトラーの演説に沸くフランクフルトの群像劇を描いている。
第二次世界大戦がはじまるとは、当時のドイツの市民には夢にも思わなかったと思う。
でも、多くな変化は大衆が切望するから起きる。
この作品では、市民のナチスというものへの戸惑い、そして多数派へのおもねりが描かれている。
1936年に刊行された本ですが、「これじゃまるで強制収容所にいるみたいじゃないか。」「あんあたはまだ気づいていなかったのかい。全国民が強制収容所にいて、政府だけが自由に動き回っている。」なんて、後の状況を知ると驚くべきことが書かれている。
その中で感じたことは、この1936年だけを見ると不況にあえぐ国ではよく見る風景であること。
なんとなく、強い強権政治を行うグループが台頭すると、親ナチ、反ナチに分かれるが、大方の人々は実際のところ、「何が起きているのか。わたしにはまったく理解できない」が真実なのだとも思う。
もちろん、イルムガルト・コインさんは執筆時に後の悲劇を知っていたわけではなく、物語は主人公の決断で終わる。
でも、大多数は「?」と思うも、大きな流れの中で流されたのだとも思う。
もう忘れられそうな年月が経っているからこそ、この物語は現代の若者が知るべき書籍だと思いました。
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