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記憶を失うことにより得られる幸せ「柩のない埋葬」

<文学(112歩目)>
中国の土地改革を地主階級の側から描いている作品、中国では現在禁書扱いのようですが、どちらがより悪いという観点ではなく、激動の時代に記憶を失うことにより平静を保とうとした女性の目から家族を考えさせられました。

柩のない埋葬
方方 (著), 渡辺新一 (翻訳)
河出書房新社

「112歩目」は、方方さんの土地改革にかかわる作品で、コロナ禍の中で書かれた「武漢日記:封鎖下60日の魂の記録 河出書房新社」以上に、私には刺さりました。

戦後の中国での「土地改革」は知識としてもかなりあいまいであることがわかった。

この機会にいくつかの本を読み学んだのですが、双方には深い背景があり、一概にはどちらが悪いとは言えないと感じた。

その中で、「改革」が急進的すぎると、末端では残酷で過激なことが起きる。

この残酷な事実から若い女性が目を背けるための「記憶喪失」の話かと思ったが、そんなに単純ではない。

「革命」って、私たちの国にはない一気に体制を変えることでもあり、その際に起きる行き過ぎの中で、人間がどのように対応していくのか?そして、その中から人間は何をするのか?が学べた。

また、すれ違う人たちに物語の重要な役割を与える手法がとても効果的と感じた。

些細なことですが、食事をしている際に出会った人との些細な会話が、後への伏線になる。

色々な意味で、計算された物語の流れに高い筆力を感じました。
この作品の後に、「武漢日記:封鎖下60日の魂の記録 河出書房新社」を読んだのですが、やはり「観察眼」と「物語を構成する技法」が特に目立つすごい作家だと思います。

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