この作品がたどってきた道のりに敬意を表します「血の熱」
<文学(113歩目)>
イレーヌ・ネミロフスキーさんの最晩年の作品。この作品が発表されるまでの60年超の月日、そして守り通したお嬢さんたちに敬意を表します。
血の熱
イレーヌ ネミロフスキー (著), 芝 盛行 (翻訳)
未知谷
「113歩目」は、アウシュビッツで亡くなられたイレーヌ・ネミロフスキーさんの作品。
古典的な心情描写に優れる文学作品ですが、この作品を託した夫のミシェル・エプスタインさん、そしてご両親がアウシュビッツに拘留される前に託されたものを守り続けたドゥニーズ・エプスタインさんに敬意を表します。
関係する人たちの強い意志により、蘇った作品です。
多くの関係者の「強い意志」により蘇る。これだけでも、「奇跡」であり、素晴らしいことだと感じました。
この作品は、特に閉鎖的な地方社会における普通の人々の人間関係から、「夫婦愛」「家族愛」を取り上げながら、古いしきたりの中で否定されていく。
大きな過渡期の中で、自分自身の存在を感じ取れない若者が戦争に行くことで自分自身の価値や人生の意義を考える人も少なからずいた。それが、作中のシルヴィオに代表される考えるも境遇に悶々とする若者を代表していて、現代にも通じることが描けていると感じました。
この素晴らしい作品を刊行してくれた未知谷さんに感謝です。
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