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「人間」の本質を突くSFが詰まっている「ひとりっ子」

<SF(175歩目)>
人気作家の短篇集、どの作品も研ぎ澄まされていますが、SFが苦手な人でも心を突く作品も入っています。

ひとりっ子
グレッグ イーガン (著), Greg Egan (原名), 山岸 真 (翻訳)
早川書房

「175歩目」は、グレッグ・イーガンさんの短篇集。方向性により、刺さる作品は異なるとは思います。でも、必ず刺さる作品があるであろう短篇集です。

「ハードSF」的には、「ルミナス」「オラクル」が素晴らしい。読み直すと、いろいろなものが浮かんでくる。

それとは違う路線で、「人間」に焦点を当てた作品を紹介します。

「行動原理 Axiomatic」
インプラント・テクノロジーの作品です。
最愛の人を犯罪により失った主人公。感情を操作するインプラントを「選択」する。
主人公には、ついつい感情移入するのですが、「その気分をとり戻したいと望んでいた。三日間ではなく、残りの人生のあいだじゅう。」
この選択が、人間であると感じました。

「真心 Fidelity」
同じく、インプラント・テクノロジーの作品です。
「愛」を永遠にしたい主人公。感情を操作するインプラントを「選択」する。
主人公のニーズって、私にもある。だから、その選択もあると感じた。
「愛」の感情を固定したい。これをパートナーと選択することは、人間の原点の感情とも感じた。「うつろいやすいのが愛」だから不安になって、「愛の感情を固定したい」はあると思うが、この「固定」は未来を確定してしまい、「いま以上」を放棄することになる。

究極のテクノロジーの、メリット・デメリットを検討する際に、この2作品のようなアプローチは、新しいテクノロジーを考える人に必要な視点だと思った。

「ふたりの距離 Closer」
私たちの「脳」をニューロコンピュータに交換できる世界。
このテクノロジーの対象は、ストイックな愛の世界。
ハードなのですが、とってもストイックなラブストーリーです。

イーガンさんの作品は、とても難しいものもあります。
ただ、「何を伝えたいのか?」の手段が「SF」であるだけ。読み終わって、再読するとまた新たに見えるものが多い作品が集まる短篇集はおすすめです。

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