見出し画像

極上のSF短篇集「息吹」

<SF(227歩目)>
読み応えありの、SF短篇集ならばこれ。

息吹
テッド・チャン (著), 大森望 (翻訳)
早川書房

「227歩目」は、テッド・チャンさんの素晴らしいSF短篇集。

既出もあるが、感銘を受けたのは

「商人と錬金術師の門」
中世のイスラム世界のカイロとバグダッドが舞台。
舞台がエキゾチックでいきなり心を掴まれた。
そして、タイムパラドックスの話。
とても短い作品ですが、SFのだいご味が詰まっている。
タイムパラドックスは「過去や未来を変えてみたい」というシンプルな人間の欲望が原点です。それに対してのテッド・チャンさんの回答がとても考えさせられる作品です。
表題作よりも、私にはとても興味深かった。
短い作中作に、いろいろな可能性を垣間見せる作品で、とても興味深い。そして「愛(Love)」を強く感じました。

「息吹」
表題作ながら、最初のとっつきが難しかった。
この世界観が最初は難しかった。
何しろ、「肺」を交換するって、なんなんだよと思ってしまった。
でも、なぞはなぞのままにならず、なぞを解こうとする試みが読ませます。

「デイシー式全自動ナニー」
このプロットはどこかで読んだ気もするが、記憶を遡るよりも、そのまま楽しんでしまえ!と思って読んだ。
現代の育児論に警鐘を鳴らすような。それでも人間の育児にかかわる本能は変わらない。

「偽りのない事実、偽りのない気持ち」
デジタルの行きつく先が描かれた作品。
現代と過去のアフリカ植民地が交互に描かれる作品で、リーダビリティがいい。
私たちにとって、既にアタリマエのテクノロジーも最初に登場したときには、様々な悲喜こもごもの物語があったはず。
これらが描かれると、私たちは未来の新しいテクノロジーでまた悲喜こもごもが起きそう。それでも人類は発展しないとならない。ライフログの使い方等々が興味深い。

「あなたの人生の物語 早川書房」といい、短篇でも奥が深く読み応えがありました。

#SF小説が好き #海外文学のススメ #息吹 #テッド・チャン #大森望 #早川書房 #商人と錬金術師の門 #ヒューゴー賞 #ネビュラ賞 #星雲賞 #息吹 #ローカス賞 #英国SF協会賞 #SFマガジン読者賞 #予期される未来 #ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル #デイシー式全自動ナニー #偽りのない事実偽りのない気持ち #大いなる沈黙 #オムファロス #不安は自由のめまい #SF #SF

いいなと思ったら応援しよう!