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五感を突く山の生活「狼の幸せ」

<文学(174歩目)>
「人生やり直し山岳小説」として、読後に「山の匂い」を感じる作品です。岩稜や雪稜をたどると手につくハイマツの匂い(ジン)を思い出しました。

狼の幸せ
パオロ・コニェッティ (著), 飯田 亮介 (翻訳)
早川書房

「174歩目」は、イタリアのパオロ・コニェッティさんの作品。登山が日常になっていた作品です。登山にかかわる描写はヨーロッパアルプス、あるいは日本アルプスを感じます。

山岳部に7年間お世話になり、その後も山が身近な私にとって、五感を突く「登山」。「音」と「匂い」は、登山にはつきもの。そのうち、「匂い」にかかわる描写が素晴らしい。

初めてのバリエーションルート。一日の行動を終えて、脳がクールダウンしてくると、手やウェアからはハイマツの「匂い」が。

行動中には感じるも、あじわう間もなく瞬間瞬間の判断の中で、消えていく「匂い」への感覚。

これが、一日の行動を振り返る際に蘇ってくる。そして、風雪や強風の中での風の声。リスクに対して全神経が集中していたのが、休息の時間になると鮮やかに蘇る。

人生においても、激闘の日々には構う余裕もないが、振り返りの時間ができた際には必ず蘇る「音」と「匂い」等の感覚。これがとても感覚的に描かれている。

ザイルパートナーからは、これに「光(陽)」の感覚もあるよね。。。
とかの話になった。

「登山中」って、風呂も入っていないし。。。なのですが、五感が研ぎ澄まされていく。これがとてもうまく描かれている。

「登山」もさることながら、「山の生活」に関心を持つ友人たちの中で話題になった本。私も賛同します。

ヒマラヤでも、欧州アルプスでも、そして日本でも、山の生活に感じ入る瞬間はある。その際に、どの感覚を突いているのか??ルートの厳しさ以上に、瞬間瞬間に五感を突く感覚。これが登山のだいご味で、「山の生活」でもあるなと感じました。

登っていると経験できる山での生活。一冊の本の中に詰まっていました。

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