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ダークで、コミカルで、はじける作品集「サワー・ハート」

<文学(72歩目)>
中国系移民の少女の眼から見た現代アメリカ。最初の一歩は艱難辛苦。

サワー・ハート
ジェニー・ザン (著), 小澤身和子 (翻訳)
河出書房新社

「72歩目」はジェニー・ザンさんの最初の短篇集。

ジェニー・ザンさんは、上海生まれで両親が文化大革命の中国からアメリカに移住した1世。彼女はオリジンは中国であるが、ほぼアメリカで教育を受けている。

彼女が子どもの頃に家族で見聞きしたアメリカ世界が描かれている。

極貧の中で育ったために、家族のきずなは極めて強い。強いからこそ、両親の苦労も子どもながらに見聞している。どれも、かなりぶっ飛ぶ文体であるが、とても移民としての最初の一歩目が艱難辛苦であることを表現している。

特に「母以前の母たち」「私の恐怖の日々」が突いてくる。

「母以前の母たち」
1966年の文化大革命時代の中国での母と祖母と叔父、1996年のアメリカ移住後の父母と主人公のところに留学でやってきた叔父の物語がクロスする。

30年間という長いようで短い期間に、中国の社会が大きく変わる中で、自分自身(女性)と母と祖母を出して、3代の女性の人生を描いている。
私たち同様に、主人公にとっても文化大革命時代というのは信じられない世界。そこでたくましく生きる3代の女性の視点が素晴らしい。

「私の恐怖の日々」
在米での生活の中に、子どもたちによる「暴力」が強烈に描かれている。
子どもって時に残酷であり、ものすごい行為に出る。
これが、「母以前の母たち」で描かれている文化大革命時代の子どもたちに近似している。

ザンさんの文体はかなり独特。疾走する若者の文体。とっつきは、私の様な爺さんには難しかったが伝えたいことが痛切に伝わる。

彼女の続作も読んでいきたい。そして、彼女の父母が私と同世代。本国で成し遂げたことをすべて捨てて、「生きる」と言うことの強さを感じました。
ちょっと追ってみたい作家です。あ~強くないと生きられない。

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