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この作品は長く読み継がれると思います「チェヴェングール」

<文学(150歩目)>
素晴らしい自然、素朴な人々。とてもいい作品です。

チェヴェングール
アンドレイ・プラトーノフ (著), 工藤順 (翻訳), 石井優貴 (翻訳), 古川哲 (解説)
作品社

「150歩目」は、アンドレイ・プラトーノヴィチ・プラトーノフさんの全てが詰まる傑作です。

アンドレイ・プラトーノヴィチ・プラトーノフさんは、ロシア文学好きには有名ですが、一般的には読まれていない作家の一人。
どんな作家であるか?を知るには、この大作よりも「プラトーノフ作品集 岩波文庫」がいいと思う。

ロシアの大地が生んだ素晴らしい作品です。私はこの薄い本から入りました。

プラトーノフさんを読むと、「理想」に向かい人類史上での実験を行った国の姿、そこから人間の本質が見えてくる。

「共産主義」は1991年にソ連の崩壊で終ったとされている。しかし、社会の格差と不条理に立ち向かった人たちがいた。その「熱」が感じられる。
まさに、プラトーノフさんは「革命」の熱い理想に燃えた若者だった。
しかし、現実の「ロシア革命」は世にもむごいことの積み上げでどんどん色あせていく。もう「共産主義革命」を実験することは無いと思うが、「理想」がかくも脆いのか?の一つの解がプラトーノフさんの作品には多くちりばめられています。

経済格差に虐げられていたロシアの人々、この経済格差の問題を無くすための「共産主義革命」は、「共産主義」の本質でもある「啓蒙主義」による。
即ち、経済格差の是正のために、今度は知識格差により知識人(共産党)が無知蒙昧な人民を導くという柱が最初から壊れていた。

経済格差にあえぐ人民が、今度は「理想」のためにまた恐怖のなかであえぐことになる。。。

「自然(の力)」と「作為」の関係が21世紀にプーチン政権で統治されているロシアにつながる。

おそらく、また革新的な「実験」が今の体制であると感じる。「実験」は「検証」されて真理につながるが、この試行検証で虐げられる人々がなんと多い事か。

この作品は、「共産主義が完成した」といわれる理想郷チェヴェングール。
ここでの出来事
であるが、100年前にプラトーノフさんに描かれた世界を極東の日本で読むことが感慨深かった。

巻末の古川哲「あるいはそうであったかもしれないロシア革命」もとても素晴らしい解説あり、「理想」と「現実」との乖離の原因はスターリンなる個人だけではなく、人間の本性によることが理解できる。

ドラマチックではないが、アンドレイ・プラトーノフさんが見た革命から、学べるところが多いと思いました。

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