法廷劇から安楽死問題を考える「神」
<文学(165歩目)>
倫理学上の問題である「安楽死」を深く考えてみる。
神
フェルディナント・フォン・シーラッハ (著), 酒寄 進一 (翻訳)
東京創元社
「165歩目」は、ドイツの短篇の名手のフェルディナント・フォン・シーラッハさんによる戯曲形式による斬新な試み。「テロ 東京創元社」と同じく短い戯曲形式で新たな問題を提示している。
表題に惹かれて読んだが、精神疾患もなく死にたいと強い意志を持った老人に対し自殺幇助の議論を「法学」「医学」「神学」を要点を丁寧にまとめて文章にされています。
おそらく、日本では「神学」については馴染みないとは思うのですが、背景等々はかなり参考になります。
ビーグラー弁護士による、難しい問題の切り出し。
これは、今後も読みたいです。
「これ以上生きることを望まず、自殺したいと訴えている人にどう対処すべきか」については、日本でも同様に考えないといけない時期が来ると感じました。
私は、ケラー氏(倫理委員会委員)の「ナチによる犯罪は小さなところからはじまって肥大化した。最初は医師の基本姿勢をさりげなく変化させただけだった。生きる価値がない状況が存在するという安楽死運動の基本的な考え方のニュアンスを変えていった。」とありますが、ここが核心部だと感じました。
小さな変化の時には、大衆は「無関心」での対応になりがち。
ここに犯罪の萌芽がある。
選挙しかりですが、いろいろなことに「無関心」で流していくことの問題点が突かれました。
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