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中毒性が高いSF短篇集「ルーティーン: 篠田節子SF短篇ベスト」

<SF(229歩目)>
多彩な才能を強く感じるSF短篇集です。おそらく、着目の早さを感じるので、未来にかかわる関心が高いのだと感じました。

ルーティーン: 篠田節子SF短篇ベスト
篠田 節子 (著), 牧 眞司 (編集)
早川書房

「229歩目」は、篠田節子さんのSF短篇集。

「子羊」
読んで思いました。バツグンです。
「わたしを離さないで カズオ・イシグロ」よりも10年前に、こんな精度で作品に昇華させていたとは。。。
読書が偏っていました。篠田節子さんの他の作品を読んでいたのですが、SFについて守備範囲を広げていなかったのだ、敗因。
とても良い作品になっている。
主人公のM24に感情移入してしまい、涙腺が決壊した。

「世紀頭の病」
この作品は、篠田節子さんの真骨頂の作品でもある。
こんな設定の疾患が存在し得るのか?は別にして、提示している問題点は考えさせられる。
病気による不幸が、「限定されていたら」「その原因が倫理的な部分にかかわっていたら」がテーマになっていく。
社会は、「誰もがなり得る疾患」については、一致団結しての抵抗を試みるが、どこかで他人事の疾患が蔓延していると人類は病に対してしっかり正面から対峙できるのか?
軽い文体ですが、非常に重い。

「コヨーテは月に落ちる」
「タワー ペ・ミョンフン」で感じた不条理の世界。これもまたペ・ミョンフンさんよりも早い着目点。
こんな不条理を作品に昇華できる才能が素晴らしい。

「まれびとの季節」
この離島の宗教への視点が興味深い。こんな作品に仕上げてしまうところが、多彩な才能を感じさせる。
柴田勝家さんの「ニルヤの島 柴田勝家」「アメリカン・ブッダ 柴田勝家」よりも先行している。
テクニカルにすごい才能と感じた。

「ルーティーン」
表題作で、読後感が非常に独特なSF。
この読後感は癖になりそうです。

それにしてもです。今まで、篠田節子さんの作品を読んでいたにもかかわらず、SF作品のみスルーしていた気がします。
とても上質な短篇集です。

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