詩「追憶」
揺らめく夏の狭間にあなたが居た
水の上を風が走る
強い日差しが体の中心を通り抜け
心に危うい火をつけた
夏の夕暮れ
あなたの影が伸びるのを見た
手が届かない感情があるのを知った
名前を付ける暇も無く
鼓動が激しく波打った
手に入れてもいないのに
失うことに怯えていた
机の引き出しに仕舞うことすら出来ず
剥き出しになった感情は
私の頬を紅潮させた
悲しくもないのに
涙が流れ落ちていった
蝉の声が遠くに聞こえた
感情が先走る程
強く想った
身体中を巡る熱が
あなたの横顔を悲しく念写した
交わる人生と交わらない人生の差異を
夏が有耶無耶にした
私が流した汗を
土が吸い込む
窓を開けると夏が呼吸する
放出された激情を分散させながら
報われなかった熱と
制服姿の私を
戻れない夏に置き去りにしたまま