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詩「冬の入口」
風に まだ冷たさが含まれないうちに
冬に入ろうとしている
心が追い付く前に
季節は去っていく
あの人は
白髪もまだ生え揃わないうちに
人生の役目を終えた
突然
風が私の頬を殴った
空を見上げると
雲の切れ間から光の粒が降りてくる
激しくも
綺麗すぎたのだ
何もかも
そう
多分…
あの人は料理を作る人だった
夕飯の
皿の上の食べ物を口に運びながら
数年間の思い出が
慌ただしく脳内を掠める
まだ行き過ぎてはいない
我々が地上に居る間は
あの人のカケラが
季節の合間に
ぽろぽろと落っこちているのだ
鮮明な記憶達を気が済むまで握り締める
そうして
私は また
冬の入り口の前に立っている