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詩「無人駅」



同じ場所に従業員の姿はない
私の足音だけが虚しく響く
右側には体温が消えた部屋
入り込もうとする光を厚いカーテンが塞ぐ

金属で乱雑に閉じられた扉
捻れて止まった時計
失った針の音
鼓動が波立つ

組み立てられたセットの様に
大切な核を失った
あの日の切符は掌には もう無い
(電子カードに刻まれた自分の名前が記号に見えた。)
青春の記憶が消えた
炎の如く燃えていた熱い眼差しも

こうなるとは知っていた事だけど
理解はできていなかった
あの日と違う色の電車が停まる
(知らない人しか乗っていない。)
ステンレスの塊の中へ
空っぽな私は簡単に飲み込まれた

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