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詩「たまご」


全てのはじまりは 一つのたまご

厚い殻に覆われて
長い間
外に出ようともしなかった

此処では今の季節が分からない
外の気温も
空気の冷たさも
自分の存在も
(決め付けられるのが怖かった
測られるのが怖かった
見透かされるのが怖かった
知られてしまうのが怖かった
自分以外の誰かに…。)

殻の中は真っ暗で
自分の姿すら分からないから
酷く安心した
傷をつけられるなんて ごめんだわ
ましてや
食べ尽くされるなんて
たまったもんじゃない

優しい優しい声がする
遠くから私を呼んでいる
例え姿 形が変わっても
私に ただ会いたいと
その方は
毎日 泣きながら祈っていた
(生んでくれた方の顔さえも私は知らない。)
世の中知らないことだらけ
宇宙のはじまりを誰も見ていない

内側から
外側から?
どちらが先かは分からないけれど
遂に 殻は破られた
眩しい光に照らされて
私が見る限り
世界は ただただ美しかった
(朝の光は こんなにも眩しすぎる。)

たまごは
ドロっと流れていった
(お月さまみたいにまんまるじゃない…。黄色い液体だったのだ。)

今日の朝食は スクランブルエッグだった






まだ1になる前の0の話

今だけだ
可能性が無限に広がっているのは
僕は
何にでもなれるんだ
形にすらなっていない
輝く未来しかない
まさに 無敵だ
(今日は宇宙が生まれる前夜だ。)

優しいあの人に出会う為
僕は長い長い旅をして
此処まで辿り着いた
あとは形になるだけ
(星は ようやく辿り着いた。形だって きっと自由だ。)

この思考も すぐに消えて行く
だったら
この瞬間だけは
悲しくなんてなりたくはない
楽しくラクに行こうじゃないか

案の定
形作られた僕は
全てを忘れて
寒い寒い冬の朝
なきながら
この世界に産まれた
(これから
ゆっくり時間を掛けて
まずは1になる…。)

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