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詩「泡」



私が花の時代は泡にまみれていた
世の中はギラギラに明るくて
ネオンが ゆらゆら揺れていた

車で送るだけの人
楽しませてくれる人
財を与えてくれる人
毎日 泡が膨れ上がる
私は その中心で踊り明かす

小さい頃は月を見るのが好きだった
今は人工的な明かりが私の目を焼く
泡は静かに肌から浸透していき
私の心を変容していく
確かなものが分からなくなる度
重たい指輪の価値に縋った

常に存在し続けるモノは
この世には あまり無い
子供でも分かる事なのに
あの時 私は子供よりも子供だった
泡は消えゆく宿命

行方が追えない人の群れ
主人あるじを失い欠落した人
欠けていく月の様に
私の丸も喪失した
それでも
人生は終わらない

現代は泡の時代を羨ましがる人の群れ
確かに
それも一つの思考なのかもしれないね
私は
消せない痛みを抱いて
欠けた月のまま今を生きている




暗い世の中に差した一筋の光の様な夢でした
笑顔を忘れた私さえも照らしました

遠くから見ているだけでは叶わない
恐る恐る夢に近付く
自分だけのものにしようとした時
私の夢は泡に変わりました

叶える事ばかりに固執して
大切な魂さえも売り渡した
清い貴方には そう見えたのでしょう
此処に昇り詰めるまで努力し続けた
それを簡単に手放したくはなかった

「儚いから尊いんじゃないかしら?」
全てを知った様な気でいる子供が言った
光を追い続けていた
あの頃の私と同じ目をして
(お稽古バッグには 母親のお守りが縛られていた。)

私の泡は水に流れた
跡形も無く消えた
世間は私をすぐに忘れ
私は世間の波に埋もれた
あの日の泡がゆらゆら揺れる
ちょうど背骨の中心辺りで
形は変わってしまったけれど
まだ
消えずに私の中に存在し続けている

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