見出し画像

詩「羽を無くした蝶」


この世界を優雅に
誰よりも華麗に飛び回っていた
白い羽ばたきを無くした一羽の蝶

ふとした時間に
ボタンを押して籠の中を覗いてみると
もう 姿を消していた

人生が針で固定され
機械の標本となり
不特定多数の者に
鑑賞され続けたくなかったのか
自由な大地へと還っていった
窓の外は 燃える夕焼け
僕の芯が焼かれて
真っ黒に焦げた
四角を持つ手は震えていた

結局
何もしなかった僕も
彼女の自由な羽に手をかけた一人に過ぎない

この世界に
かろうじて残ったのは
検索ワードに引っ掛かった
ボロボロになった
彼女の残骸

新しい時代の風を錆びた身に感じながら
自分自身の胸に
現代の優しさとは何かを問う

いいなと思ったら応援しよう!