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魚サンドという食文化

日本はやっぱり魚がおいしいねえ。まだまだ暑い日が続くけれど、そろそろ秋の魚の季節が近づいている。

焼きたての焼き魚を食べながら、一緒にアツアツのご飯を食べる。もしくは刺身であっても、やはりアツアツのご飯を。僕は魚の食べ方としては、鼻腔をくすぐる炊き立てのお米と一緒に食べるのが好きなのです。

日本は島国で海に囲まれている。なので魚が豊富。日本は魚の国やね。

ドイツで魚を食べてみよう

さて、ここから話は今日の舞台、ドイツへと飛ぶ。僕が住んでいたドイツの2つの地域では、魚はあまり豊富でなかった。もちろん、ドイツであっても地域によって魚事情は全く違っているはず。北部の北海に面している地域では、魚がごく一般的に食べられている。

ただ、ドイツの多くは内陸部に位置しており、日本と比べると海が遠い地域がずっと多い。僕が住んでいたいずれの街も、やはり海からは少なくとも100km以上は離れていて、もともと歴史的には川魚や湖の魚くらいしか食べる習慣がなかったはずの場所。

なお、近年は冷蔵技術の向上や物流の発展があり、加えて日本人をはじめ魚を食べる国の人たちがドイツに多く住むようになったこともあるのだろう、海から離れているドイツの街であっても、探せばよい魚を手に入れることも夢ではない。高いけど。

もっともそうは言っても、食文化というものは長い期間を経て強く深く根を張っているもの。小麦や肉が主食だったこの国では、質の高い魚を探すことは日本ほど簡単ではない。

でも、ですね。

やはり、あります。魚を食べることが根付いているドイツの文化も。

大きな湖へ行くと、そんなドイツの魚文化が堪能できる。

たとえば、この右側の小屋が、魚を売っているお店。

実はここ、大きな湖の中ほどに浮かぶ島。船やボートでないと上陸できない。僕は毎年夏になると、家族や友人家族とSUP(スタンドアップパドル)を漕いでこの島に上陸して、ブラブラと歩きまわって遊ぶことが毎年の恒例になっていた。

そのときの楽しみが、お魚。毎回このお店で魚料理をテイクアウトして食べるのが恒例になっていた。

で、その「魚料理」ってどんなものか?

それは「魚とパン」。簡単にいうと、魚のサンドイッチ。

では、どんな魚が食べられるのか?

たとえばRenke(マス)、Brachsen(鯉)、Zander(スズキ)、あと珍しいところでは、Aal(ウナギ)も売られていた。

「魚とパン!?」と眉をひそめられるかもしれない。けれど、ドイツ人にとってパンというものは、日本人にとってのご飯と同じ。日本人が魚とご飯を一緒に食べて恍惚とするのと同じように、みなさん魚をパンに挟んで、ホクホク顔でほおばっている。

実際に食べてみると、魚とパンという組み合わせは僕の味覚にとって悪くはない。いや、むしろこれはこれでとてもマッチしている。すぐに大好物に。

いつもこうやって湖の畔に座って魚サンドを食べていた

ちなみに、このあたりの地方でよく売られていた魚には、次のようなものがあった。この地域で捕れたものではない魚も多かったけれど。。。

Lachs(サケ)、Seebarsch(スズキ)、Dorade(鯛)、Makrele(サバ)Matjes(マチェス)、Hering(ニシン)、Alaska-Seelachs(スケトウダラ)・・。

なお、食べ方としては酢漬けや燻製が多かった。つまり、海が遠いから魚を保存食として食べる様式が一般的、ということだと思う。くだんの魚サンドを売っているお店も、燻製にした魚がメイン。そういう魚文化だと言えるのだろう。

ちなみに、ビアガーデンや魚屋さんでは、よく焼きサバが売られていた。特に、金曜日はキリスト教のカトリックでは肉を食べてはいけない日。現代でも習慣として肉の代わりに魚を食べる行動様式が少し残っている。

ときどき金曜日のお昼には会社の同僚たちと近所へ焼き魚を買いに行って、川の横のベンチにみんなで座って食べたっけ

パンはお皿の代わり説

さて、話を魚サンドへ戻すと。僕としては、魚と一緒に食べるパンの位置づけを、日本人にとってのご飯と同じ役割で捉えていた。けれど、うちの奥さんとこの話をしていたら、彼女の見立てはもう一つあった。

彼女の分析によると、もちろん食事にはパンがつきものという文化もあるけれど、実用的な意味合いも大きいんじゃない?と。

実用的という意味はなにかというと、パンを「お皿の代わり」として使っているという見立て。

それには前提がある。ドイツでは屋台でソーセージを買おうとすると、一般的にパンに挟んで売ってくれる。この「パンに挟んで売る」理由は何かというと、焼いたソーセージだけを売るという形態が非合理的だから、と奥さんは考えていた。つまり、長いソーセージをパンに挟むことで、お皿が不要になる。パンを「お皿の代わり」にしているという解釈。

だから魚を売る時も同じ構図では、と。ずっとむかしから屋台などで売られていたはずの魚。むかしは魚を売る時に、紙皿などを用意することが一般的でなかったことは容易に想像がつく。

そんな当時の時代には、魚の酢漬けや燻製をお店の人がペロンと渡して「グーテンアペティート!」(めしあがれ!)なんてやっていたとも考えにくい。パンに挟んで提供すれば、手も汚れないし、美味しくなるし、一石二鳥。そういう経緯で文化として定着したのでは、という説を奥さんは唱えていた。

昔からの様式を頑固に守り続ける傾向のあるドイツ人たち。紙のお皿が容易に手に入るようになった現代であっても、「屋台の魚といえば、パンに挟むものと決まっているだろ?」とばかりに、現代でもその様式を受け継いでいるのかも知れない。

by 世界の人に聞いてみた

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