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夕暮れ時にゆっくり読みたい物語たち

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2021年1月の記事一覧

くるクル狂ドーナツ

くるクル狂ドーナツ

■■俺■

「いらっしゃいませ」店の自動ドアが開く音がして、反射的に口が動く。もっと元気に爽やかに声を出せと何度店長に言われただろう。でも、何度言われても俺には「元気に」「爽やかに」がどんなもんなのか分からない。

木曜、午後7時15分。普段は木曜の夜にはシフトに入らないけれど、元々シフトだったアンドウサンが当欠したらしく、店長から召喚のラインが入っていた。普段は仕事ができない俺をシフトに入れたが

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生老病死のご近所物語

生老病死のご近所物語

今日はあたたかだった。
一歳半の次男あっちゃんと庭で遊んでいると、お隣のおばあちゃんがやってきた。

以前別のnoteにも書いた90歳近いおばあちゃん、佐藤さん。
4歳長男の発音だとシャトーさん。

庭に来たシャトーさんに、あっちゃんは即座に抱きつく。
遠方の祖父母とは会えないこのご時世、シャトーさんがあっちゃんにとってのおばあちゃんだ。
シャトーさんも同じく、まだ一度も会えていないひ孫がいる。

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来世で巡り逢わない

来世で巡り逢わない

冷たい夜だった。妙な時間のスマホの通知音に嫌な予感がする。「やり直せないかな。会って話がしたい」画面に表示されたメッセージをしばらく見つめているとだんだん苦しくなって、やっと自分が息を止めていたことに気付く。冷静になれ。心で小さく念じて私はそっとスマホをテーブルに置いた。

◇◇◇

やり直したい、だって。笑えるよ。敢えて口に出してみると、とても冷たい響きになった。話し合おう、そんなこと何十回も繰

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『ずっと、添えてきた色は』

『ずっと、添えてきた色は』

過去と地続きの現実のなかで
淡々と
日々を塗り替えていくなかで
何度も
絵の具をおとしてきた場所に
触れる
かさねつづけて盛り上がった
それは
まるで瘡蓋のよう、幼い頃に
転んで
泣いて帰ったあの日のことは
今では
思い出すこともないのだけど
確かに
あの日もわたしは色を添えた
いつも
塗りかさねてきたその場所に
ずっと
奥のほうに層をなす色たちの
記憶を
呼び起こせばそこに虹、昏く
夢から
祝福

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