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【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第7話
賑わう街から離れ、閑散とした荒野にやってくるロプトとフレイ。
フレイは大声で楽しそうに話しかけているが、ロプトは耳を手で押さえ、鬱陶しそうに無視をする。
すると、荒野に似合わない異質な構造物が見えてくる。
「相変わらず、変な家だな、お前の家は」
ロプトは見慣れた光景なのか、異質なものを見ても、驚かず平然としている。
メタリックなドーム状の建物がロプト達の前に立ちはだかる。
よく見ると、唯の家ではな
【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第6話
犬が飼い主に尻尾振って陽気について行く如く小走りでフレイはロプトの後を追いかける。
旋回遊泳しているエグレゴアが、ロプトの後を追いかけるフレイを発見して、目を見開く。
―――やっと、めざめたのね
エグレゴアは遊泳をやめ、急ぎ上へ泳ぎ、漆黒の海の中に消えていった。
ロプトは立ち止まり、気だるそうに見上げ、エグレゴアが消えたことに気づく。
「監視の時間は終わりか?今回は早いな」
ロプトの目線をフレイ
【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第5話
「なんで、分かるんすか」
少女ことフレイは、八つ当たりでロプトが座っている樽を蹴飛ばすが、ビクともしない。
蹴った反動でフレイの足が風船の如く赤く腫れ、「いってえ」と泣き叫ぶ。
ロプトはフレイの幼稚な行動を見て、やれやれ、というふうに力なく笑う。
「声で丸わかりなんだよ。お前の声は女子供とは程遠い、百年以上生きた爺さんみたいに低くてハスキーなんだよ」
フレイは足の痛みが収まったのか、意識が再度ロプ
【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第4話
パラディソスと海を隔てる鉄扉が開き、半壊の潜水服を身にまとったロプトが膜を通過してくる。
壊れかけのロボットじみた見かけだが、ロプト本人は無事で、その場で地団駄を踏み、怒りを顕にする。
「お、王子!? 」
兵士二人がロプトに駆け寄ろうとするが、ロプトは身につけている壊れかけの潜水服を脱ぎ、兵士達に乱暴に投げつける。
「もっと、ましなものを作りやがれ」
ロプトの真珠の如く輝く銀色の髪が投げた勢いで靡
【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第3話
並列して光る海月達に沿って上に泳ぎ進めるロプト。
泳いでると、潜水服のヘルメットのガラスに小さなヒビが入る。
ヒビを見て、ロプトは苦い顔をする。
「うげぇ、早くもガタがきてやがる。この後“サードホイール”とやり合うのに·····急ぐぞ」
愚痴をこぼし、ロプトは泳ぐスピードを上げる。
パラディソスから百メートルほど泳ぐと、宇宙にいるか如く静かな海の中で突如金属を切るときに出る音のようなに耳を塞ぎたく
【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第2話
「王子、お止め下さい」
甲冑を身につけたガタイの良い兵士が二人ががりで潜水服を着た少年を取り押さえている。
だが、少年は物ともせず、二人の兵士をズルズルと引き摺りながら、鉄製の巨大な扉に向かっている。
「えい、出国の邪魔をするな、お前ら」
「潜水服だけで深海に出たら、一時間もせず、水圧で潰されます」
「水圧なんかに潰されるような鍛え方などしとおらん」
「無茶ですって。それにもし水圧をクリアしてもそ
【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第1話
深海1万メートル、漆黒の海の奥底に”楽園”のような国が存在する。
その名は海底帝国「パラディソス」。
パラディソスは水中にあるわけではなく、国自体は巨大なドームに覆われて、冷たい深海の海水と水圧から守っている。
ドームは水圧から守れるほどの分厚い透明なガラスで覆われている。
ドームの中には一際目立つ城とその城下には活気あふれる街が拡がっている。
城下町に暮らす人々の数はおおよそ1万人、もしかしたら
【連載小説】「くじらは神話を運んでくる(仮)」 | 第0話
――ぼくはすくえなかった
光も届かない漆黒の海の中を白い巨体のくじらが尾鰭をバタつかせ、慌てるように潜っている。
慌てる白いくじらに対して、海の中は静かだ。
ーこのこはきぼう。あのくにをかいこくするのにひつようだ
白いくじらは泳ぎ続けると漆黒の海の中にポツンポツンと光り輝く玉が現れる。
光り輝いているのは大きな海月達。どこかへ導くように発光する海月達は列になって漂っている。
――もうすぐだ
白