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最果タヒ『星か獣になる季節』
(内容ではなくてイメージでの感想文)
くしゃくしゃの学生服で通った高校のあおくてにがい空気、それにいつも気持ちが悪くなってきたない和製トイレの個室に逃げていた。眠くなる授業はよく机の下でこっそり本を読んでいた。家族や友達に内緒でホームページをつくって、ファンタジーを追っかけたりしていた。家の前にあったレンタルショップでよく、わずかな小銭で古いロックのCDを借りてよく聞いた。どこかネジれた自分
アンナ・カヴァン『氷』
可憐で虐待を受けていた少女を、幻影の偶像として追い求めた男の物語。ともすればロリータのように、自らの美学と妄想とを傲慢に紡いだ先を、賄賂や地位を用いながらも、一人でただただ少女と再び出会うために、もくもくと足を進める。立ちはだかるは、少女を賤しめるもう一人の男、長官。
少女を求め、情勢が不安定のなかでもずんずんと景色が変わっていくこの話。初めの印象の、言わば悪者である長官。守るべき少女。そして「
『甘々と稲妻』 雨隠ギド
最近は料理をテーマにした漫画やドラマが流行って流みたいですが、僕は週末に録画した幸腹グラフィティのアニメくらいしか観ていませんでしたが、ただただ、美味しそうな表情を見ているだけでもう、一週間の疲れも癒してくれています。
甘々と稲妻、またタイトルがするどい感じなんですけど、数学先生のおとうさんが主人公で、一人元気なむすめのつむぎと一緒に、空いた食堂でごはんを作り始めて、小さな幸せな出来事と触れ
『ちーちゃんはちょっと足りない』阿部共実
何だか幼児っぽいアホな子が主人公のギャグ日常漫画なのかなぁ、とページをめくっていった。でも実際の主人公は、その幼馴染みだった。
設定は中学生なのだけれど、挙動や考え方や善悪でさえも、幼児のようなちーちゃん。その横で、物静かなんだけれど、周りが着飾ったり彼氏が出来たり大人になっていく様に、焦ってしまっているナツ。最初の数ページを試し読みしただけじゃ、この話の魅力はわからなかった。反転。どろり。
『子供はわかってあげない』田島列島
春うららな火曜日。電車も楽になった事で余裕を持って出社できるようになったのですが、お弁当を食べてしばらくすると、あれよあれよと言う間にお腹が膨れて痛くなってきてしまいました。くの字でおトイレに向かったものの痛みは増すばかりで、仕方なしに現場リーダーや会社に連絡をして、早退を申し出たのでした。その足でお隣のビルのクリニックに向かったものの、お昼からの検診は3時からだとかで閉まっておりましたので、お隣
もっとみる『クジラの子らは砂上に歌う』 梅田阿比
不思議なタイトルの漫画。主人公は14才の少年。隔離された世界の中で暖かく生きる人々が、不意に触れる外の世界の暴力へ向いていく―
友人がとても推していたので一生懸命本屋さんを探していたものの中々見つからず、どうやら少女漫画の棚にあることが家に帰って分かったりした。内容とは裏腹に。
主人公の中性的な愛らしさが作者の持ち味なんだろうなと思った。それは年若いキャラクターだけではなく、老人や大人の描写も
涼元悠一 『青猫の街』
KeyのAIR、CLANNADのライターになる前の、作家の涼元悠一のミステリー。
Windows95が出たばかりの(もう20年前)インターネット幼年期の、SEで27歳の主人公の、失踪した友人を、仕事の合間に足とPCで追っていく話。
昨年僕も転職して都市部のSEになって、今も物凄く古い言語とシステムを管理する大きなビルの中で働いてる。だからなのか、劇中のプログラム用語がすごくナチュラルに感じられ
ハローサマー、グッドバイ
ハローサマー、グッドバイ
M・コーニイ
草子ブックガイドという漫画をきっかけに手に取った中の一冊。SFではあるものの、ティーン小説としても等身大でよくて、ハリーポッターやウォールフラワーなども影響を受けたのかもと妄想してしまう。
兎に角、序盤の初々しい女の子であるブラウンアイズが可愛い。
国家権力は悪という分かりやすさもなく、本当の恐ろしさは戦争なのか、階級差別なのか、そんな問いかけをする
リチャード・バック「ONE」
週末の深夜に「惑星ソラリス」を観た。今週は「かもめのジョナサン完全版」を通勤の電車の中で読んだ。次に読もうと「ONE」にブックカバーをかけた。かもめのジョナサンと同じ、リチャード・バックの小説。
小型飛行機に乗る仲の良い夫婦が、飛行の最中で時空を超えて、様々な自分、また様々な歴史や国にいる人と出会い、旅を続ける、そんな物語。
この本には、格言となる言葉がページをめくる度に出てくる。そのたびにア
かもめのジョナサン 完成版
僕が初めて「かもめのジョナサン」を読んだのは、高校生の頃だったと思う。文庫本を図書館から借りて一度だけ読んだ。全3章の短いそれは、シンプルながらも将来に迷う自分にとっても確かに励みになる説話だった。ただ「えさ」を食べるだけに生きる群れを捨て、飛ぶことに意義を持って、あらゆる可能性を超えることに成功したジョナサン。けれども、それ以上に感銘を受けることもなく、気がついたら僕も学生時代が過ぎ、何度か転が
もっとみる少年は残酷な弓を射る 下
上巻の最後にシーリアが産まれ、下巻になってからのエヴァは以前のような悪意に満ちていなかった。そして成長したケヴィンもまた、赤ん坊の頃に感じる嫌悪感より、その態度にどこか魅了されることもあった。夫フランクリンへも、どんなに辛辣にあたっていたとしても、当たり前の家族として、愛情をエヴァはもっていた。
事件そのものについては、上巻で何度も刑務所の話を挟んでいたからわかっていた。けれども、この本そのもの
少年は残酷な弓を射る 上
最初はただ不満だらけの主婦の愚痴をうだうだと読まされるんじゃないかって警戒して、実際そんな感じで本は夫への手紙という体裁で話が進んでいく。そしてどんどんと、美化され尽くして幸せの定義になっている、恋愛、結婚、セックス、赤ちゃん、そういったものの幻想がそれはもう面白いようにビリッビリに引き剥がされていく。
話は、コロンバイン高校の例の事件のように、息子が生徒を無差別殺戮をしたらしく、そんな彼へ
草子ブックガイドが本当に良くて
今の仕事に繋げるためにやっていた職業訓練所で買わされたOffice類の参考書を売って、代わりに1冊100円の漫画コーナーで、ぱらぱらとめくり気に入った草子ブックガイド一巻。翌日の週初めの電車と、昼休みに渋谷の裏通りを散策して見つけた小さな公園で、ミルトンナシメントなんかを聴きながら、丁寧に読まされ、とても凄く心に沁みつけられてしまった。
小さな古本屋と本を拠り所とし、学校や家に居場所のない草子の