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言葉の表現力を豊かにするには? エッセイ#45
小説を読むことは、私にとって言葉の表現力を豊かにする方法の一つです。
読み終わったあとの、余韻に浸るひと時は、特に好き。
小説で描かれている世界に遊びに行って、
ふっと自分の人生に戻ってきたみたいな感覚。
そして、その余韻に浸りながら、
「活字のみ」で、
その小説の世界に引き込んで没頭させてしまう、
小説家の言葉の表現力に、ひしひしと感銘を受けるのです。
小説は、読んでいて純粋に楽しいのと同時に、
情景や、音、匂い、心の揺れ動きまで、
瞬時に想像させてしまう、小説家の言葉の表現力に触れられるから、
さまざまな美しく鮮やかな表現をインプットできて、
自分の言葉のパレットの中に、新しい色が追加されて、色彩豊かになっていく。
最近読んで大好きになったのは、
森沢明夫さんの「おいしくて泣く時」という小説。
たった今、パッと開いたページに、こんな一節がありました。
夕立だ。
幾千万の銀色の糸で、窓の外の風景がぼんやりと霞む。
わたしは子どもの頃から、雨が嫌いじゃない。
雨音も、水の匂いも、やわらかくにじむ世界の彩りも、毛羽立った心を落ち着かせてくれるから。
私も雨の日が好きだから、なおさら、心に残った一節。
降りしきる雨粒を、
「幾千万の銀色の糸」って表現するのかぁ…
とか、
窓越しに雨でぼやけた景色を、
「やわらかくにじむ世界の彩り」と、描写するのかぁ…
とか、その言葉選びの美しさと、
瞬時に、読者の目に情景を映してしまう、表現力に感動が止まらないわけです。
「毛羽立った心を落ち着かせてくれる」
なんと秀逸な表現なんだろう。
そんな風に、この小説は、
言葉で彩り豊かに表現される世界観や、
中学3年生の主人公の繊細な心の機微、
主人公を取り巻く大人たちの懐深い温かなキャラクター、
思わぬ展開のストーリーに、引き込まれてしまうわけなのですが、
森沢さんの小説にはその先がある。
だから、私は森沢さんの小説が好きなんだろうなと思うのです。
それは何かっていうと、
森沢さんの小説は「あったかい」のです。
今回読んだ「おいしくて泣く時」も、
読み終わったとたん、あとからともなく涙がこぼれ落ちてきて、
衝撃的で感動的な結末だったのは、もちろんなんだけど、
これほどまでに涙が溢れてくる理由は、言葉にならないんですよね。
この小説を通じて、
じんわりと伝わってくる「あったかさ」が、胸に沁みて沁みて、たまらないのです。
言葉から伝わる、
言葉を超えた「あったかさ」。
森沢さんの作品に触れると感じる「あったかさ」が、
私の心の琴線に触れて、こんなに涙が溢れてくるのだと思いました。
「作品」って、触れると感じるエネルギーがあると思う。
小説もそうだし、エッセイも、絵画も、音楽も、ダンスもetc… さまざまな形の作品があると思うけれど、
その作品を創った人の、人となりや、込められた想いや、愛情、
つまり、エネルギーは、伝わると思うのです。
noteは、文章で作品をつくっている人が多いけど、
そこに並んだ活字からも、書いている人の人となりとか、魅力とか、文章の温度感とか、
なんか文字を越えて伝わってくるものってあると思いませんか?
だから、
私の文章を読んでくれた人、
私の言葉に触れてくれた人に、
言葉を通して、
でも、
言葉を超えた「あったかさ」を感じてもらえるような、
エッセイストになりたいなぁと。
そんな風に思いました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました😊
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