千夜千首#2/読みかけの本もったまま眠る昼遠浅のしろい海の夢みる
こんばんは! 生きづらい社会の中で、心がスッとラクになる「言葉のお守り」をお届けするつくだ@書籍編集×作家です。普段は文章を書いたりまとめたりする仕事をしています。そして毎日短歌を詠み、本を読んでいます。
かの大編集者・松岡正剛さんの人気連載「千夜千冊」のごとく、毎夜にわたり、おすすめの現代短歌を一首ご紹介していく連載企画「千夜千首」の第二夜も、小島なおさんです。
各歌人さんの歌の魅力をじっくり味わっていただくため、本連載では1週間にわたって歌人さんの短歌をお届けしていきます。では、小島なおさんのデビュー歌集『乱反射』に収録されているこの短歌からはじめていきましょう。
読みかけの
本もったまま
眠る昼
遠浅のしろい海の夢みる
本をもったままついうとうとと眠ってしまう。皆さんはそんなことないですか? まさに「読書あるある」の一つだと思うのですが、それに呼応するのが下の句の「遠浅のしろい海みる」ということばが醸し出す穏やかなリズム。上の句と下の句が見事に呼応して、ゆったりとした心地良さを読む人に与えています。
中でも活躍しているのが「遠浅の」ということば。海にもいろいろありますが、このことばをもってきたことで穏やかな情景描写となり、上の句とチューニングが合いました。そしてこれはおそらくなんですが、眠っている人の穏やかな呼吸と、遠浅の海の穏やかな満ち引きが呼応しています。だからこそ見る夢は海の夢、それも遠浅で本の紙面のようにしろい海の夢となったようにわたしは感じました。
そして海を描いているのにこの歌からは音がしません。「ザザーッ」といった擬音語を使わないことで、静寂で穏やかな雰囲気を作り出しているのですね。そして、結句を「夢みる」と体言止めにすることで、歌に余韻を持たせています。
一見すると、日々の生活によくある一コマを切り取った歌のように思えますが、それだけではありません。「ゆったりと過ごすことの心地よさ」みたいなメッセージが隠れているのではないでしょうか。せわしない世の中ですから、逆にこのゆったり感が心地よく受け止められるように思うのです。
今日もまた、実に味わい深く素晴らしい歌に出会いました。感謝!
小島なおさんのプロフィール
1986年東京都生まれ。93年から94年までお父様の仕事の都合でアメリカで暮らしていらっしゃいます。お母様(小島ゆかりさん)の手伝いをしていて、短歌に興味を持ち、日経歌壇に投稿をはじめ、2004年に第50回角川短歌賞を受賞。その後も、第一歌集『乱反射』で第8回現代短歌新人賞、第10回駿河梅花文学賞を受賞するなど、数々の賞を受賞されています。
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それぞれの歌についてわたしなりに解説していますが、その解釈にかかわらずご自由に解釈して楽しんでいただけたら幸いです。もしよければ、その感想をコメントにお寄せいただけたらとても嬉しいです。
明日も一首、心に刺さる短歌を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!
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