【読書】日本とユダヤの古代史&世界史 その4
出版情報
著者:茂木 誠、田中 英道
出版社 : ワニブックス (2023/6/9)
単行本 : 304ページ
本稿の構成
本稿は下記のような一連のシリーズの4. ユダヤ人と日本人のこれからです。
ユダヤ人と日本人の関わり
古代日本にユダヤ人が来ていた!そのうち第5波
大航海時代と改宗ユダヤ人
ユダヤ人と日本人のこれから
著者のひとりである田中英道の方法論 フォルモロジー(形象学)に関しては、2-1 古代日本にユダヤ人が来ていた!そのうち第1波〜第2波まで に記載しています。
ユダヤ人と古代日本人との関わり
田中は古代ユダヤ人は5波に分かれてきたという。
第1波 前13世紀 出エジプト|縄文時代・日高見国・スサノオ
第2波 前722年以降 アッシリア捕囚と失われた10支族|日本建国
第3波 前3〜2世紀 秦の始皇帝・徐福と3千人|秦氏各地に渡来
第4波 3〜4世紀 弓月国から秦氏2万人|応神天皇が受け入れ
第5波 431年以降 エフェソス公会議・ネストリウス派|蘇我氏
世界を席巻するグローバリズム
ウォール街:アメリカに拠点を移したユダヤ人
米国ウォール街といえば誰もが知る世界的な金融街だろう。だがその前は英国シティが世界No1の金融街だった。ロスチャイルドなどが活動し始める前からシティはシティとして存在した。最初はユダヤ人居住区だったのだ。一方、アメリカに拠点を移すユダヤ人たちも出始める。
人口から見ても、米国内ユダヤ人はイスラエルに次いで多い。
実は古代日本でも、この状況が生じていた。(田中史観を受け入れるとしたら)古代日本に5波に渡ってユダヤ人たちが渡来していた。例えば応神天皇は2万人の秦氏を受け入れた。古墳時代の日本全国の人口は540万人。2万人というのは0.3%だ。古墳は当時、石を積み上げ大きな埴輪を飾ったハイテクな公共事業。その古墳を16万基も全国に作り上げた。現在のコンビニの件数は6万軒弱なのでその数の多さがわかるだろう。0.3%の人数で残りの人々の同意を得て、労働力として動員しなければ、これほど多くの古墳を築造することはできない。しかし、これだけグローバリズムによるマネー主義が席巻し、多くの人々が振り回されている今日とは違って、古代日本を秦氏たちが支配し牛耳るようなことはなかった。
現代アメリカはまさにユダヤ金融資本の牙城と化しアメリカではグローバル ユダヤが「完全に支配することができた」が、古代の「日本ではそれができなかった」。(また別の例を挙げると、和同開珎の流通を目論んだ多胡羊太夫。朝廷を巻き込み鳴物入りで法令などのシステムを整えたが流通は成功しなかった。米でも絹でもない銅のおもちゃに当時の日本人は価値を見出せなかったのだ)。
フランクフルト学派
ユダヤ人たちは、政治に無関心ではない。アメリカに関しては、
グローバリスト ユダヤ人は、階級闘争史観によるマルクス思想という分断の思想も生み出した。マルクス自身はロスチャイルドの親族であり、なんらかの援助を受けていたのが想像に難くない。また、ロシア革命には大勢のユダヤ人が関わっていたことが史実として明らかになっている。この計画経済を用いた古典的マルクス主義の終焉はソ連邦の崩壊と共にやってきた。1988年から1991年にかけてのことだ。(その一連の流れの中に1989年のベルリンの壁崩壊もあった)。
田中はチャイナの社会主義も失敗するという。
一方で、すでに20世紀前半には階級闘争史観によるマルクス主義は時代遅れであるとして、フランクフルト学派が誕生した。「哲学、科学、芸術等近代全般にわたって根底的な批判を行う」 「社会の近代化によって人間が自然(人間を含む)を支配し、搾取する」。こういうものの見方そのものが分断を生む。それゆえ、フランクフルト学派は「文化マルクス主義」とも呼ばれている。文化を蝕み破壊する考え方だからだ。フランクフルト学派の考え方は、批判的人種理論、自虐史観、行きすぎた性嗜好の強調(昨今のLGBTQ問題など)に結びついていく。ただし、現在はwikiなどでは「文化マルクス主義陰謀論」と陰謀論扱いされ、田中は、その陰謀論を担ぐひとりであると認識されているようだ。少し長いが田中の論考「文化を破壞する左翼「批判理論」の根源 ――アドルノとフランクフルト学派批判4 3」などを読んで、陰謀論かどうか自身で確認していくきっかけにするのもいいのかもしれない。
経済のみならず政治も志向し、さまざまに画策するユダヤ人。それは決して悪いことではない。だが、
現在続いているウクライナ戦争。ポグロムを起点とし米国に渡ったユダヤ難民の子孫によって、「ロシア憎し」そして隠れた「ウクライナ憎し」という気持ちから、ある程度長期にわたる計画や画策や工作がなされ始まった、と見る向きもある。だがこれは、ロシア人やウクライナ人のみならず、ウクライナという地にとどまらざるを得なかったユダヤ人同胞たちに苦しみを与える結果にもなっている。
日本人にとって、縁遠いと考えられている「ユダヤ問題」であるが、そうも言っていられない、と田中は警鐘を鳴らしている。
イスラエルという国
上記 茂木の言説にもあるように、グローバリズム ユダヤの対極にイスラエル ユダヤがある。世界のユダヤ人の人口は約1500万人。そのうちおよそ半数がイスラエルに半数がアメリカにいる。具体的な人数ではイスラエルが700万人、米国が600万人というp257。
今まで本稿では、本書『日本とユダヤの古代史&世界史』にそって、ずっとユダヤ人のディアスポラ=離散の歴史を振り返ってきた。いわばグローバル ユダヤの歴史とそのありようをずっと追ってきた。『1. ユダヤ人とは何者か』でその歴史の概観を、『2.ユダヤ人と日本人の関わり』『3.ユダヤ人と日本人の関わり その2 キリスト教関連』によって、古代日本にやってきたグローバル ユダヤ人と、その時々での日本人との関わりを、また近世において改宗ユダヤ人たちが宣教師となって日本に渡ってきたので、それについても見てきた。
本稿では、グローバル ユダヤの対極にあるイスラエル ユダヤの歴史を概観し、イスラエルという国の現状をざっと見ていこう。
イスラエル建国
フランス革命以降、フランスではユダヤ人は解放されたが、反ユダヤ感情には根深いものがあった。パリでユダヤ人軍幹部に対するスパイ冤罪事件(ドレフュス事件)に遭遇したハンガリーのジャーナリスト ヘルツルは、ユダヤ人の国家建設の必要性を痛感した。彼はその後1897年に第1回シオニスト大会を開催し、それがひとつの政治勢力になった。ロスチャイルド家はシオニズムを財政的に援助した。
第一次対戦中、オスマン帝国と戦っていたイギリスは、ロスチャイルドなどユダヤ人富豪の援助を引き出すためパレスチナの地にユダヤ人国家建設を約束した。その結果、多くのユダヤ人がパレスチナに移住した。
第二次対戦後、イギリス、アメエリカの支援を受けて1948年にイスラエル共和国が成立し、シオニズムは目的を達成した。しかし、そこに住んでいたアラブ人たちはパレスチナ難民となり、ユダヤ人との間に激しい対立を起こし、深刻なパレスチナ問題として現在も続いている。(以上 世界の窓「シオニズム」の項より要約)
現在のイスラエルは、右派ネタニヤフ首相に率られ、アラブの盟主サウジアラビアとの国交正常化を果たしたい旨、報じられている。民族構成はユダヤ人74%、アラブ人21%、そのほか5%。2000年以来凹凸はありながらハイテク・情報通信分野を中心に輸出が好調。現在の主な輸出品目は機械類、化学製品、ダイヤモンド、医療精密機器、農産品などである。コロナ後の2021年の経済成長率は8%を超え堅調な経済状況がうかがえる(以上 外務省資料)。また2022年のイスラエルの一人当たり名目GDPは54,710ドル。日本は33,822ドルであり、日本の約1.6倍となっている。
公式な首都はエルサレムであるが、実質的に首都機能を持っているのはテルアビブである。日本に比べると物価は2〜3倍ほどか。旧市街は美しくホテルなども充実している。エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地となっている。嘆きの壁が有名。国営エルアル航空のセキュリティチェックはテロを警戒して、かなり厳しいものがあり、各旅客機にレーザーによる対ミサイル迎撃システムが備えられているという。
人々の暮らしについては、観光会社のサイト以上のことは調べられなかった。とても残念ではあるが今後の課題としたい。
旅動画などを見た印象であるが、パレスチナ自治区は「素朴で途上国っぽい」。イスラエルは「真面目でリッチ」。食べ物の感じは中東に似ているようだが、イスラエルでは飲酒ができるところが大きく異なるようだ。単なるパッと見た目での判断なので、間違っていたらいろいろご容赦願いたい。あるいは教えていただければ幸いである。
新しいユダヤ人像
土地持ちのユダヤ人(イスラエルに住むユダヤ人)とグローバリズムのユダヤ人(米国など他の国や地域在住)。今両者の人口は拮抗している。
米国内のイスラエル人も、割れている。
「イスラエルで頑張ろうとする民族意識の高い愛国ユダヤ」。残念ながら、具体的なイメージとして、愛国ユダヤの人々はこういう人々だ!と理解し、本稿で描くことはできなかった。それでも、ネタニヤフ首相などはそういう人なのでは、と想像する。
「これからは過去の怨念を捨て」これは、本当にそう思う。一方で今でもパレスチナ自治区で砲弾などにより負傷する人々が、いる。米国務省にいるグローバル ユダヤの典型ヌーランドなどは、恨み骨髄できっと今も陰に陽に各種作戦や工作を続けているのでは、と憶測してしまう。痛みを抱えていることは理解できるし、寄り添いたいと思うが、それにより戦争を引き起こす…日本人にはなかなか理解し難い、また許容し難い考え方だ。
逆に日本人は、どうやって「過去の怨念」という痛みを乗り越えてきているのだろう?例えば原爆の痛みを。忘却によって?左翼プロパガンダによって?それとも、災害死史観によって?恨みのような負のエネルギーを持つことは虚しいから?ひとりひとりが向き合い、言葉に紡いでいくときがきている…。それは、例えばヌーランドに届く言葉だろうか?
ぜひ、そうしていきたいものだと願っている。
樋口季一郎の功績と日本精神
歴史の変わり目である現在
茂木によると、日本人とユダヤ問題の出会いは戦前にさかのぼるという。
『シオン賢者の議定書』は「ユダヤ人が裏で世界を牛耳っている」という陰謀論の定本だ。
当時ドイツはユダヤ人から公民権を奪い、ドイツからソ連経由で満州にユダヤ人難民が逃げてきていた。
では、こういう人道的な決断が即決できた、樋口季一郎という人はどういう人物だったのか? 次項で見ていこう。
樋口季一郎という人物
樋口は上記の通り「ユダヤ人を救った」ことのほかに、もうひとつ英雄的な働きをした。北海道をソ連占領から守ったのだ。
まさに日本の英雄だ。教科書で学ぶ必要があるような。
日本人とユダヤ人へのメッセージ
では、樋口はどういう考えに基づいてユダヤ人を守ったのか。1937年のハルピンでの《第1回極東ユダヤ人大会》の来賓挨拶が掲載されていたので転載する。
この挨拶文をどのように受け取るかについては、各人に委ねよう。
ドイツは圧力をかけてきたが、樋口も、その上司の東條も「当然なる人道上の配慮である」として、見事にスルーしたp282。日本はほかにも、上海のユダヤ難民について、ドイツから圧力をかけられたが、ゲットーに収容し、敗戦まで日本軍の保護下においたp283。
日本人自身によって、先の大戦は、もっともっと詳細に見直す必要があるのではないだろうか。
ユダヤ人と日本人のこれから
ユダヤ人についてオープンに語る時がきた!?
田中は次のようにいう。
その通りだと思う。「ユダヤ民族の問題は、客観的な視野でやらなくてはいけない時代にきている」p274
グローバリズムやマネー主義は悪いことばかりではない。
ユダヤ人の「違う文化と文化を引き合わせるという商人的な関係性の中で生きる」特性。「彼らの良さ、面白さを引き出すということ」「外の文化に影響されることによって、その国や民族の文化がさらに引き出される」そういう相乗効果。
また、田中はこうもいう。
一神教から多神教へ、そして「自然道」へ
日本人の精神とは何だろうか?
多分、これが日本人が持つ共通した価値観なのでは、と思う。田中はこれを”日本人の精神”と呼んでいる。樋口中将のようなことを誰もができるわけではないかもしれない。だけれど、「人間を守ことを最大限に大事にすることが、逆に国家を守ること」だといわれれば、多くの日本人が肯首するのではないだろうか。それは普段は言葉で語られないけど、日本人が共通して持つ価値観のように思うのだ。
日本の多神教は、インドやチャイナのものとは違う。「自然道」なのだ。神という言葉を使うとそこに人間のエゴが投影されてしまう。
日本人だけがユダヤ人を同化させた。
ユダヤ人が進む道はユダヤ人が決めていくのだろう。その上で、そして日本とユダヤの2000年間の関係を見た上で、田中は以下のように提案をしている。
では、私たち日本人は?
「自然道」という道徳心というか信仰心というか、そういう心を持ち、命に区別をつけず、大事にする…
それができているかどうかは別にして、そういうことを確かに「志向しているらしい」と自覚した上で、自分の目でいろいろ確かめていく…
まずは身近な、古墳でも、埴輪でも、神社でも…
そういうところから始めてはどうか、と提案されていると
私は受け取った。
みなさんは本書を読んで、何を感じるだろうか?
引用内、引用外に関わらず、太字、並字の区別は、本稿作者がつけました。
文中数字については、引用内、引用外に関わらず、漢数字、ローマ数字は、その時々で読みやすいと判断した方を本稿作者の判断で使用しています。本文内『「」pページ』の「」中は、pページ内文章をそのまま記述していることもありますし、pページ内に記述されている重要部分を本稿作者により要約していることがあります。
おまけ:さらに見識を広げたり知識を深めたい方のために
ちょっと検索して気持ちに引っかかったものを載せてみます。
私もまだ読んでいない本もありますが、もしお役に立つようであればご参考までに。
現在のイスラエルについて、また国民の生活について書かれているサイトがなかなか探せなかった。英語で検索すればよかったのかな?
図書館にも適切な本がなかった。『イスラエル=古代聖書の世界』という感じの本ばっかりだった。アマゾンで検索すると、いくつかイスラエルに住む人々の様子がわかる本があった。
まさにこういう本であれば、実際に住んでいる人々を理解する手助けになる。
防衛大学名誉教授の人が書いたエリア・スタディの本。エリア・スタディってなんだ?昔は地誌研究とか言ったのかな?いやエリア・スタディと地誌学の違いみたいな論文もあったりして、よくわからないな。地域研究=エリア・スタディ。地誌学=地理学の一分野出そうだ。
これも現代のイスラエルがよくわかるのでは?
ご存知、地球の歩き方。
こういう視点も必要なのかもしれない。
観光旅行会社のサイト。
旅するVLOGerのイスラエルレポート
茂木誠のyoutubeチャンネル
田中英道のyoutubeチャンネル
wikiによると、田中英道のyoutube番組で面白そうなのは、コレらしい。