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『短歌研究』2024年1月号

夕ぐれの豆腐は籠にしづまりて深く愛さず怨むことなく 馬場あき子『飛種』収録 
 判・吉川宏志〈人を怨まないのは、深く愛していないからだろう、という諦観を歌う。能に登場する怨む女を思いつつ、自分はそのようには生きられないことを受け容れている。〉
 ペア自歌合わせ(第1組)より。ペアになって、歌をそれぞれ二首出し、もう一人が相手の二首の内、どちらが優れているか判定する。第1組は馬場あき子と吉川宏志のペア。この歌はとてもいいと思った。吉川もこちらを「勝」としている。感動ポイントは「判」で説明されていて納得だ。

②座談会「すべての言葉の表現者のためのジェンダー表現」中塚久美子・澤村斉美・中井智子 
中井〈これまで女性が働く現場ではセクハラが常態化していても、それをトラブルにしないでうまく対応することが求められて、それができる人が組織に残ってきた。それは大間違いなことで(…)〉
 セクハラ問題というとどうしても短歌の場より仕事の場でのことが頭に浮かんでしまう。この発言にはある時代までの雰囲気が濃厚に感じられる。「大間違い」と言ってもらってうれしい。20代の時に聞きたかった。これまで、が最近ならがっかりだが。

③座談会
澤村〈上の世代には「夫」に家父長制的なものを色濃く感じるという文化があって、一方で、私は逆に「夫」は法律上の呼び名であって、今はそこまで家父長的な意味合いはないんじゃないかと思っています。〉
 これはまさに表現の問題。ある言葉にまつわるイメージは世代でかなり違う。澤村はこの発言の前、夫という言葉を使うことに、上の世代の女性歌人が驚いたというエピソードを紹介しているが、私も似た経験がある。理論としては分かるけど、肌感覚がちょっと違う。微妙なところだが。

④対談「『源氏物語』の女性像」(前篇)安田登×三宅香帆
 この対談、面白かった。これまでにもいろいろな人が源氏の女性像について語っているが、少しずつ突っ込み所が違うのがいい。今回は紫式部個人の個性の話と、夕顔のキャラクターの新解釈のところが良かった。

⑤「歌壇ニュース」
 催し案内に取り上げていただきました!ご参加よろしくお願いします!

2024.1.29. Twitterより編集再掲

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