独断と偏見で語る大河ドラマへの思い2
今から2年ほど前にNHK大河ドラマについての総評記事を書かせていただきました。
この記事で私の勝手な独断で選んだランキングは、
第1位「いだてん」2019年(8.2%)
第2位「龍馬伝」2010年(18.7%)
第3位「平清盛」2012年(12%)
()内は視聴率:社会実情データ図録より
私が1位に選んだ「いだてん」は、ビデオリサーチ(関東地方)によると歴代大河のうちでワースト記録だったそうです。
大きな苦難を乗り越えてオリンピックを実現しようとする人々の姿は、涙なしでは見られず、こんなにも泣いた大河は他にありませんでした。
私にはこの結果はまったく理解できないどころか、どうしてこの良さが視聴者に伝わらなかったのか不思議でなりません。
ですから今回の記事は「いだてん」の魅力をお伝えしたくて書いたようなものなのです。
「いだてん」の魅力ポイント
☝戦争や大震災、差別や偏見に不屈の精神で立ち向かう
☝過去と現在がオーバーラップする構成が新鮮
☝心温まる人間関係を描写
日本がオリンピックに初めて参加した1912年の「ストックホルムオリンピック」から、1964年の「東京オリンピック開催」までの52年の間に関わった人々の努力と情熱を描いたものです。
おりしも時代は激動の時代、戦争はもちろん、数々の歴史的事件を乗り越え、信念を貫いて達成した感動作なのです。
主人公が「日本のマラソンの父」金栗四三(中村勘九郎)、東京オリンピック招致を実現させた田畑政治(阿部サダヲ)というリレー方式も見ごたえあるものでした。
人見絹江に号泣した
印象に残るシーンはたくさんありますが、特に日本人初のオリンピックメダリスト・人見絹枝(菅原小春)の苦悩は忘れられません。
170cmの身長の彼女は当時としては「バケモノ」扱いで、並外れた運動能力の高さを持ちながら、どこか引け目を感じていました。
その中で自己能力に気付き、努力してオリンピック出場を果たしますが、当日、そのプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも自分の思いを伝えるシーンはたまりませんでした。
期待された100m走で惨敗し、ぶっつけ本番で800mに挑戦しようした人見が泣きながらきっぱり言い切るのです。
「大オンナ」とか「男オンナ」とか言われ偏見の目で見られ続けたからこそ、この晴れ舞台で結果を出さなければいけない!
女だからこそ、メダルを取らないといけない!
~このシーンに涙腺は崩壊しました~
この人見役は菅原小春さんなのですが、この時初めて見る方で、その後も朝ドラ「おかえりモネ」に出ていたらしいですが、まったく印象にありません。
調べてみると、本職はダンサーで女優さんではないことに驚きました。
あの熱演は本当に凄かった!
人間同士の血の通った繋がり
他にも感動シーンは目白押しでした。
嘉納治五郎(役所広司)のスポーツへの情熱と、オリンピック開催を見ずに他界した事。
金栗四三(中村勘九郎)とその兄(中村獅童)の兄弟愛。
若き日の古今亭志ん生(森山未來)と師匠・橘家円喬(松尾スズキ)との師弟愛などなど。
中でも特異だったのは、嫁のスヤ(綾瀬はるか)と姑の幾江(大竹しのぶ)の関係は本当の母子以上の心の繋がりを感じるものでした。
それぞれの人間同士の気持ちの繋がりを巧みに描いた演出に、何度泣かされたことか。
今思い出しても胸が熱くなる名シーンだらけなのです。
当時は酷評だらけの「いだてん」でしたが、私は脚本の宮藤官九郎さんをはじめ、構成・演出、全てにおいて高く評価しています。
どなたか「いだてん」の素晴らしさをご存じの方おられませんか?
是非、語り合いたいものです。
今年の歴代大河ランキング
今年のマイナビニュースが発表した大河ドラマ人気ランキングは以下の通りです。
推しの「いだてん」が11位に浮上しているのは、再評価されたということなのか?
三谷作品は安定の人気あり?
やっぱり「鎌倉殿…」が1位になっていますね。
確かに面白くて毎回目が離せませんでしたから、これには納得です。
同じ三谷幸喜作品で5位「新選組!」と6位「真田丸」は、私としてはこれは逆評価で、「新選組!」はもっと下位ではないか?
私の評価は「真田丸」の方が断然上です。
この経緯を見ると三谷作品は最初こそちょっと空回りしましたが、その後の真田丸、鎌倉殿…と回を重ねるごとに確実に充実してきたと思います。
三谷作品は、コミカルとシリアスを合わせ持った展開が大きな魅力で、ふざけ過ぎない、真面目過ぎないという絶妙なバランスが上手い。
古い作品は忘れ去られる?
出来が良かっただけでなく、記憶に新しいことも大きな要素でしょう。
それを考慮すると「独眼竜政宗」は37年も前にもかかわらず、いまだに上位に食い込むのは大したものだと思います。
もちろん、当時は非常に夢中にさせられましたが、今となっては映像や構成的に少々古く、現在も十分楽しめるものかどうかは疑問です。
メルヘンだった昨年の「どうする家康」も確かにツッコミどころはたくさんありながらも、新しい「家康」を見せてくれたとは思います。
大河に何度も登場している家康を、今まで通りに描いてしまっては何の面白みはなかったですし、そういう意味では誰も見たことのない家康像は斬新だったのではないでしょうか。
賛否両論あった「どうする家康」が4位なのは、まだ記憶に新しい事が大きいでしょう。
私の新・勝手なランキング
いや~これは難しい!
前回から新しく3作品が増えて、順位をつけるとするなら、やっぱり「鎌倉殿…」をどこに持っていくかが悩みどころ。
というのも、「龍馬伝」は福山雅治さんの演技が光り、幕末ものの中ではダントツに良かったし、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎の目線だった事も成功要素だったのではないでしょうか。
龍馬暗殺のあと、近江屋の前で水たまりにひざまずき、両手で地面をたたきながら泣く姿は、弥太郎の真の気持ちが十分に表された感動シーンでした。
「平清盛」は若いエネルギッシュな清盛から権力を手にした老いた清盛まで演じ切ったマツケンの演技力は素晴らしく、宮中の権力闘争に打ち勝ち、初めて武士の地位を上げ、やがて滅びゆく平家の哀れさまでも描いた絶妙の大河でした。
ちょうど今年の大河「光る君へ」への後の時代になるので、歴史の流れも掴むことができます。
悩みに悩んだ結果3つに絞るならこうなりました。
👑1位 いだてん
👑2位 龍馬伝
👑3位 鎌倉殿の13人
泣く泣く「平清盛」は4位になりましたが、限りなく3位に近い4位です💦マツケンの大ファンなので、またヒット作に出演されることを心から期待しています。
私と大河ドラマ
昭和38年(1963)、幕末の彦根藩・井伊直弼の生涯を描いた「花の生涯」から始まり、今年の「光る君へ」で63作目を迎えています。
この中で私が初めて真剣に視聴したのは、昭和48年(1973)の「国盗り物語」でした。
まだ当時は11歳の子供でしたが、祖父と一緒に観ているうちに惹き込まれしまい、ちゃんと意識して観た最初の大河ドラマでした。
その後、司馬遼太郎さんの原作を高校生以降になってから読み、続いて他の作品も読み漁ったものでした。
大河ドラマがきっかけで「司馬節」の魅力にもとりつかれたため、長い間、歴史の王道は「しばりょう」だと思い込んいたほどです。
それはまた後日、覆ることになりましたが…
いろんな作家の角度の違った視野での作品は、読み比べると面白くて一時期は本当に歴史小説を読むことに明け暮れました。
とはいえ、「国盗り物語」以降の大河の全作を観たかと言えば、そうではありません。
まったく観ていないものもあれば、途中リタイアのものもあるのは、夜遊びに夢中になっていたり、子育てで気持ちが離れていたりで、実は観ていないものも多いのです。
ですから、私のランキングは本当の意味で、「独断と偏見」と言えるもので無責任この上ない勝手なものです。
ひとつ言える事は、最近の大河は良くできている。
意表を衝く展開。
美しい映像。
斬新な構成。
加えて、今をときめく旬の俳優たちを惜しげもなく起用しています。
そこからは、「NHKの本気度」が伺え、こちらも襟を正して真剣に観ざるを得ない作品に仕上がっていると思います。
今年の「光る君へ」の展開も上手いですね。
今のところ目が離せない秀作になる期待は膨らみますが、どうか裏切られる事なく終えて欲しいものです。
さて。
大河ファンの皆様、あなたのベスト3タイトルは何?
【大河ドラマを見る時の心構え】
☝️決して史実通りと思ってはいけない。
☝️時代小説と同じく、あくまでも創作だと認識する事。
☝️自分の理想を押し付けてはいけない。
☝️意外な展開になってもツッコめるほどの寛容な気持ちを持つ事。
☝️素直な目でストーリーの行方を見守る事。
☝️それぞれの時代を生きた人々の人生を尊ぶ事。
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