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古代メキシコの独自すぎる感性
前回記事にした「四天王寺 聖霊会」の翌日の4月23日にかねてから前売り券を購入していて行く気満々だった「古代メキシコ展」へ行ってきました。
実は一度、間違えて休館日に行ってしまい、急遽ハルカスの「円空展」へ行くという事態にもなったので、今回は念願の鑑賞でもあります。
最初にお断りしておきますが、私は世界史や古代史には疎く基本的な流れも理解できていないので、記事内の表現がもし間違っていたらすみません。
この展覧会も半ば夫の付き添い感覚だったはずなのに、観るものすべてに感動せずにはいられなかった事に自分で驚いています。
何も解っていないくせに、古代人の営みに魂レベルで感動したのです。
出品点数が多くて
充実の内容だった
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前15世紀から後16世紀のスペイン侵攻まで。3,000年にわたって栄えたメキシコの古代文明。本展覧会では、そのうちマヤ、アステカ、テオティワカンという代表的な3つの文明に焦点をあてます。
以下はHPよりDLした出品目録ですが、実に100をゆうに超える展示数があり、圧巻の内容でした。
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見ても見ても、まだあるという感じで、延々と展示が続き、おまけに私の眼にはどれも見応えのあるものばかりで、見終えたときはかなり気持ちが高揚していました。
しかも撮影可能なのはありがたく、各作品には説明書きも添えらえているので、非常にありがたく、薄暗い中で効果的に照明を当てて、見やすいだけでなく神秘的な雰囲気を演出した展覧会でした。
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壁に巨大な遺跡の写真パネルがあったり、ミニシアターの上映があったり、基本的に展示品は360度のあらゆる方向から眺めることができたり、
平日だったにもかかわらず、混雑していたのも当然かもしれません。
日祝はかなり混雑したことでしょう💦
全てを紹介するには私の知識も時間も足りませんので、記憶に残ったものだけを挙げていきたいと思います。
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メキシコから中央アメリカ北西部に位置したマヤ、テオティワカン、アステカは共通の特徴をもった高度な文明で、他の文明とは全く違う独自の発展を遂げました。
紀元前15世紀というと日本は「縄文時代」だったことを思うと、その時代の特に土器などは装飾過多で、実用的というよりは何かしらの呪術的な意味合いを持っていたようで、その点は日本も似ているように思いました。
天体と暦を熟知
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太陽と星は地下を通る
テオティワカンの「羽毛の蛇ピラミッド」には長さ103m、深さ15mに及ぶ地下トンネルがあり、その最深部に王墓があったと考えられています。
その途中にはたくさんの小部屋があり、おそらく王の豪華な副葬品が収められ、各入り口は塞がれていたはずですが、はるか昔に破壊されて盗掘されていたようです。
残っていれば貴重な史料となったのに、残念です。
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昼の太陽と夜の星は、空から地下を通って順番に回っていると考えられていたので、地下の世界も神聖な場所として捉えていたのです。
沈んだ太陽が地下を通るなんて、とても面白い考え方ですよね?
だから地下深くに道を堀り、大切な自分たちの王を葬るというのは、なるほど筋が通った話です。
正確な暦
驚くことに、マヤ人は精密に天体観測をし、一年がほぼ365日であることまで割り出していました。
おまけにピラミッドも、それを起点にした都市づくりも、一分の狂いのない碁盤の目の配置だったそうです。
これは天体の知識なしではできないことらしいです。
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だからこそ「皆既日食」の日時も解っていたようで、上記の「死のディスク」は黒くなる真ん中をドクロ、そこから放射線状に漏れる光を周りの溝で表現していて、ちゃんと観察していたことが伺えます。
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生贄の儀式
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「チャクモール像」は中央のお腹に持った平らなお皿に神への捧げものを置いたと考えられています。
おそらくは生贄として、人の胸から取り出した「心臓」を置いたと推測されているのです。
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音声ガイダンスでそう聞いた時、思わず映画「インディ・ジョーンズ」の1作目?だったかで生贄の儀式で心臓をくり抜くシーンが頭に過ぎりゾッとしてしまいました。
生贄は身体がキレイに揃ったものや、首をはねられた多くの胴体のみが山積みされたもの、さらには動物たちの死体なども同じ部屋に納められ、人間の首だけは別のところに整然と並べられた状態で発見されました。
それら生贄たちの遺伝子を調べたところ、王のものとは全く異なることが判明し、その正体は、おそらく戦争で得た捕虜たちや近隣の土地に住む者たち、すなわち移民族だったようなのです。
恐ろしい事しますねぇ💦
野蛮極まりない事ですが、当時の彼らにしたら神聖な儀式だったのですから、生贄にも重要な意味があったのでしょう。
日本だって生贄の風習もありましたし、戦国時代の戦は首取りが主でしたから、昔の日本も他国の事はいえません。
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シペ・トペックとは「皮を剥がれたわれらが王」という意味
文字の発達
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マヤ文明には絵画的で美しく、そして謎に満ちた独自の存在の文字が知られている。
マヤにはすでに4万~5万の文字があったとされています。
それらはいまだに全ての解明には至っていません。
図録によると、本当の読み方や文脈上での意味が正確に理解できているのは50%程度が限界であろうとされるのには、今のところ知られている約700文字と数万通りにも及ぶ組み合わせが関係しているようで、非常に難解であるためです。
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文字なんだか、絵なんだか、記号なんだか、区別がつかない。
例えば音声ガイダンスのモニターに示してくれた一例はこんな感じです。
解りやすいようにと表記してくれたのでしょうが、それでも私にはさっぱりわかりません。
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ちなみに日本の縄文時代にはまだ文字はなく、土器などに見られる記号などがそれにあたるらしい。
それともその記号が実は文字だったのか?
赤の女王は誰?
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この展示を見たとき思わず「わっ!」と小さく声を上げてしまったほど、私にとっては鮮烈でした。
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古代マヤの都市のパレンケ遺跡での王墓にあたる「碑文の神殿」で、当時の王・パカルの遺骨が発見され、その西に並ぶ13号神殿では真っ赤に染まった遺骨が発見されました。
この遺体は深紅の辰砂(水銀朱)に覆われ、多くの副葬品を身に着けた女性である事がわかった。
この女性は誰なのか特定できなかったため「レイナ・ロハ」と呼ばれます。
その後の調査で、パカル王と血縁関係がない事や、その埋葬の状態から王妃のイシュ・ツァクブ・アハウではないかと推測されています。
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左:碑文の神殿(王墓)と右:13号神殿(王妃墓?)
昨年、安土城跡の正面階段に立った時、感動のあまり涙が出ましたが、少し歴史に触れた今、こんなマヤ遺跡を見たら号泣するかもしれません。
その他の展示いろいろ
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それとは逆に立像はどこか茶目っ気がある。
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日本のものとは大きく違い、デコラティブでデカい!
上の写真の「香炉台」もデカくてコテコテのデザインで、
まったく違う独自の感性であることがわかる。
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火鉢は日本人には全くそう見えない。
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若い頃、インディアンジュエリーが好きで、そこからインディアンの文化に少しハマったことがあったのですが、今回の古代メキシコのセンスや感性は、どこかインディアンのものと似ているなと思いました。
インディアンはアメリカの先住民族なので、古代からの過程のどこかで枝分かれしたものなのかもしれません。
と、まぁ全く知らないくせに勝手な事を言っていますが、今回の展示を観て、世界史や古代史にかなり興味が湧いてきたことは間違いありません。
【参考・引用】
・NHK「古代メキシコ 失われた文明の謎」
・図録「Ancient Mexico」
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