僕の本を食べる女 / 村田は綴る✍🏻
するとどうでしょう。
口もとは微笑みをたたえ、静かな物腰で本を読んでいたかと思えばおもむろにページを破り始め、食べ始めたではありませんか!
どうしたことでしょうか!!
本は食べるものではありません!!!
ハードカバーの表紙はことさら硬いようで獣の形相で右奥歯を使い、擦り潰し噛んでいます!!!
いや、絶対硬い!歯が傷ついてしまいます!!
一体誰が止められるでしょう!そこまで空腹だったとは!つゆ知らず!
ん?何かが歯に引っかかったようです。長い紐を華奢な指輪が似合う細い頼りなげな指で歯の奥から引っ張り出しています。どうやら本にくっついている栞の役目を果たす"スピン"の様です。
紙は食べても紐は食べられないようですね。
その吐き出したスピンを体裁よくお皿にくるりと撫でつけ、また紙を食べはじめるのです。
一心不乱とは尊いものですね。
跡形も無く本を食べきり満足したのか私の方へ向き直り、「また美味しい本を食べさせてね」と微笑みます。紙により少しかさついていた唇も今はアイスコーヒーを含ませ、しっとり艶やかです。
次回のデートには色付きの挿絵が入った本をプレゼントしようかと思います。
【僕の本を食べる女】
#村田は綴る ✍🏻 #創作 #長崎原爆の日
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