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読書人間📚

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読書人間📚 『最後のひと』松井久子

読書人間📚 『最後のひと』松井久子



『最後のひと』松井久子

2022年 初版/中央口論新




『疼くひと』からつづき、今度は本当に最後のひと。
そんな未来があるなら、なんてロマンチックでしょう。
私に夫がいたとして、もし私が先だてば夫もまた最後のひとを見つけてくれたらいいという思いに耽ります。
人生の終わりに孤独でなくさいごの最後まで幸せだったと振り返られたら最高ですよね。
そしてその性愛もいいではありませんか

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読書人間📚 『本心』平野啓一郎

読書人間📚 『本心』平野啓一郎





『本心』 平野啓一郎

2021年 単行本 文藝春秋刊
2023年 文庫 第1刷


アバター、AI、VR、内容に今っぽさを感じますが、やはり誰もがおちいるのではないかと思われるその作りものの中身 "本心"。
亡くなってしまった母の本心、愛してはならない人の本心、恋敵の本心。知らなくて幸せなこともあるのに人は知りたがる。思考する人間なら当然のことでしょう。
そして "心"は再

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読書人間📚 『欲望』小池真理子

読書人間📚 『欲望』小池真理子

『欲望』小池真理子

1997年7月 新潮社刊行









『欲望』小池真理子


1997年7月 新潮社刊行


ひとりの女の長い長い欲望の悶えに3ヶ月程の時間をかけ読み終えました。
正確には、自分の性器に振り回され性器があることを忘れて生きられなかった者たちの死の物語...でしょうか。
三島由紀夫が作中に何度も現れますが、その時点で全てにおいて想像がつきそうなも

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読書人間📚『疼くひと』松井久子

読書人間📚『疼くひと』松井久子

『疼くひと』松井久子

2021年2月 初版
同年9月 7版発行

『疼くひと』松井久子

2021年2月 初版
同年9月 7版発行

__愛の胚胎__

世の中は、いえ、まだ若い世代にはこれを想像しろとは経験値がない中で当たり前で、老年の男女たちの性愛を許せないものでもあるでしょう。
70を過ぎれば心をときめかせる事も、体の疼きもないものとまるでタブーの様に触れてはいけない、あるいは感知されずに

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読書人間📚 『薬に殺される日本人』〜医者が警告する効果のウソと薬害の真実〜

読書人間📚 『薬に殺される日本人』〜医者が警告する効果のウソと薬害の真実〜

『薬に殺される日本人』〜医者が警告する効果のウソと薬害の真実〜 @yusabul

原作 内海聡(内科医・NPO法人薬害研究センター理事長)
漫画 くらもとえいる



PRなどをやっていると日本は薬機法にうるさい国、それだけきちんとしている国かと思えば実はそういうことではないと感じるこの頃。
力を持つ人々が言葉巧みに掻い潜り誤魔化しているのだとわかったりもします。
つい先日には、厚労省か

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読書人間📚 『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ

読書人間📚 『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ








『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ


2021年 新潮社刊行
2024年 文庫発行



▶︎Debugger
若い男と付き合うとこーゆー地獄が待ってますよ〜な
警告作品... ではなく、こころを強く、無理のない自分を愛せよ。でしょうか。

▶︎Cooscientia
心の病いをもった人と付き合うのは並大抵のメンタルではつとまらない。一球入魂しない為

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読書人間📚『銀の夜』角田光代

読書人間📚『銀の夜』角田光代



読書人間📚『銀の夜』角田光代



2020年 光文社刊行
2023年 初版一刷




__伊都子は病院にいくのがこわかった。「今」にかろうじてひっかかっているような母と会話をするのは、足がすくむほどのおそろしさだった。__


__伊都子は訊いたが、芙巳子は何も答えない。薄くくちびるを開いたまま、眠ってしまったようだった。芙巳子の息は日ごとにくさくなる。内臓が腐ってい

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読書人間📚 『恋』小池真理子

読書人間📚 『恋』小池真理子

読書人間📚『恋』小池真理子

1995年 早川書房 単行本刊行
1999年 ハヤカワ文庫刊行
2003年 新潮社 単行本刊行
2013年 10刷

1996年 直木賞受賞

狂おしい程の恋。とはよく言うけれど、人は彼らを狂人とするのかもしれません。
秘密の共有がこれほど甘い、狂った情愛をもたらすのか。これほどの事情が私に起こったなら、私も狂人化しその惰性なる情愛に身を焦がすのか。考えると、その甘

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読書人間📚『落下する夕方』江國香織

読書人間📚『落下する夕方』江國香織

『落下する夕方』江國香織


1996年 単行本 角川書店
1999年 文庫本
2019年 48版発行


現実に存在したのかと思わせる浮遊。
誰にとっても胸を熱くさせる存在。
大切なものを奪っておきながら、私の心にさえもすんなり入ってくる。
そして、それはまるで何ごともなかったかのような静かな足音で去っていく。
長い時間をかけて、失うつらさを刻々と味わう。
始めから何も無かったように消えて

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読書人間📚 『乗り遅れたホームの上で』江沢よし

読書人間📚 『乗り遅れたホームの上で』江沢よし


『乗り遅れたホームの上で』江沢よし

2023年 初版第一刷発行



今もどこか遠いところで誰かの哀しみがあり、人が人として生きる為に哀しみを乗り越えようと営む。
しかし生きる限りその哀しみは消えるものでもなく、胸の奥底で大切にしまい、時には開封し懐かしみ涙する。
人は弱いというけれど、江沢さんの著書の中に弱さは垣間見えません。信念を持った人、それを見つけた人だけが持つ強さでしょうか

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読書人間📚 『虐殺的スイッチ / 一人すら殺せない人が、なぜ多くの人を殺せるのか?』森達也⁡

読書人間📚 『虐殺的スイッチ / 一人すら殺せない人が、なぜ多くの人を殺せるのか?』森達也⁡


『虐殺的スイッチ / 一人すら殺せない人が、なぜ多くの人を殺せるのか?』森達也


2018年 出版芸術社、単行本刊行
2023年 筑摩書房 文庫


"善良な人が善良な人を殺す" なぜ。
ひとりひとり個でみれば善良な人だが、集団化すると善良でなくなる。なぜ。 
森さんが撮られた作品『A』『A2』拝見しました。
私にもそこに映る人々が "悪"には見えませんでした。
あの妙な感覚は森さん

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読書人間📚『不可逆少年』五十嵐律人

読書人間📚『不可逆少年』五十嵐律人

読書人間📚『不可逆少年』五十嵐律人


2021年 単行本/講談社
2023年 文庫




リーガルミステリー作家作品の映画化「法廷遊戯」が気になっていましたが、少年犯罪に興味があるので本書を手にとりました。
その名を「不可逆少年」造語です。
環境を変えたり、教育により立ち直らせることのできない少年。生物学的要因により非行に走る少年。感情、それらが脳の特別な構造により欠落した状態に

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読書人間📚 「ほかならぬ人へ」白石一文

読書人間📚 「ほかならぬ人へ」白石一文

「ほかならぬ人へ」白石一文



「ほかならぬ人へ」と「かけがえのない人へ」の二篇。
尊い時間は、その時には気づけないものか。気づけないからこそ尊いのか。案外、本当に必要で大切なものは近くにあったりする。居心地の良さに、それを改めて幸福だとも感じず日々が過ぎてゆく... 。
私にもそんな経験があります。不思議なもので、それに気付くまでは孤独を感じることはなく、気付いてしまえば孤独に苛まれる。

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読書人間📚「枯れないからだ」植物療法士/森田敦子⁡

読書人間📚「枯れないからだ」植物療法士/森田敦子⁡


「枯れないからだ」植物療法士/森田敦子


2018年 初版発行
2020年 3刷発行


コロナ禍にこれを機にと手に取り、いよいよ向き合う時が来たかとページを捲れば、そこには想像もしない将来のことが書いてあり、ゾッとしながらまたそっと閉じてしまいました。
さてもう2023年も終わりに、やはり気になって仕方がない。知らないでは済まされない現実がある事を受け入れる時が来たかもしれない様なせ

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