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小小不言,其实美丽

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小小不言,其实美丽=とるにたらないことこそ美しい
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2020年3月の記事一覧

愛しているから、会えないよ

愛しているから、会えないよ

人間が忘れやすいことの二大巨頭がある。

ひとつめは、
幸福でも不幸でもない、何もない日がいちばん特別だということ。

ふたつめは、玄関先で見送るときは、あるいは駅前で手を振るときは、大切な人を見送るときは、本当に下らない理由でそれが最後になる時があると、いうこと。

洗濯物をゆっくり畳む母の背中、深夜のファミレスから出た時にあくびをした友人の横顔、電車の窓で流れて消える夕焼けの地元の橋。

二度

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あれが前世だったのかはわからないけれど

あれが前世だったのかはわからないけれど

※この文章は2018年7月に書いたnoteのリライトです

“〇〇能力”
“〇〇術”

そんな類を一切信じない私のところに、ある日、アメリカから帰ってきた友人が言った。

「ぼく、催眠術の資格を取ってきた!」

長い付き合いの中、この人は頭がおかしいなぁと昔から思っていたが、ここまでかと私は頭を抱え、彼を心底哀れな気持ちで見つめた。そんな視線をもろともせず、彼はたたみかけるようにとんでもないことを

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歴史を学ぶ意味

歴史を学ぶ意味

中国の上海にいたとき、街中でたまに差別に遭うことがあった。

「日本鬼子(日本の鬼の子)」という差別用語が中国に存在する。世界大戦時に日本が攻め入り、鬼のように酷いことをしたというのが所以であるらしい。私は鬼滅の刃を見ると、一瞬、薄らとそのことを思い出す。あれは鬼退治の話だが、人間を鬼と表現するなんて、よほど怨念の絡んだ歴史だと子供ながらに理解した。

当時は特に日中関係が悪い時期だったからだろう

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真実に半透明の嘘を被せる  #私の執筆スタンス

真実に半透明の嘘を被せる  #私の執筆スタンス

昨日以前の過去も、今も、そして未来もきっとエッセイを書いています。

それは真実や実際起こったことの中から見つけ出した【人が生きていく上での真理】を書いていきたいから。

真理とは、いつの時代も、どこの場所でも、変わらない普遍的な観念のこと。

幼い頃から移りゆく環境にいたこともあり、そういうものを見つけ出そうとする癖が付いております。そして、それを見つけ出すことを細やかな楽しみとして日々を過ごし

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目に見えないウイルスが、今まで現代人が見て見ぬふりをしてきたことをどんどんあらわにしていく。造られた好景気、とんでもない格差、中国への依存度、未だに蔓延る根強い差別意識、情報選択能力の無さ..

幸せの音

幸せの音

コッ、コッ、チャシャッ....

一人暮らしの白い天井の朝、卵を割る音で目が覚める。えっと...いま何時だっけ.. 昼前だから、まだ日差しが鋭くない。

私だけのはずの部屋に、合鍵を持った彼が来ていることはすぐに分かった。扉の向こうのキッチン。すりガラス越しに映った姿で、静かに料理を始めている。

私を起こす前に何かを作ってくれているのかぁ..寝ぼけながらそう思う。まだ半分も目が開いていないから、

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性差を超えた母の心

性差を超えた母の心

ある人が、それまで何の興味もなかったのに、惹きつけられてどうにも目が離せない存在になることがある。そんな久しぶりの感覚に、心が華やいでいる。

その人のインタビュー記事は『母』の心に溢れていた。ずっと中性的な自分に苦しみ、周りから求められることを一心に叶えようともがいた先に、どうしても消えなかった自分らしさ。それを自分に許すことで、周りの何もかもを包みたいと思えるような母の心をその人は手にしていた

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