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柴田 チロ@とある自死遺族
2022年3月8日 06:43
自死ということもあり、また世間的にはコロナ禍であることもあって、祖父母と叔父、母も皆親戚や知人を呼んでの葬儀は望まなかったため家族葬という形を取ることにした。お葬式の当日、お経が読み上げられたあと、肉体だけになった父の最後の見納めとなって、家族みんなで嗚咽が出るほど泣いて、それから棺の蓋をして、霊柩車に遺影をもって乗って、母は後ろの棺の隣に位牌を持って座って。両親にはいろい
2022年3月7日 09:24
薬剤によって防腐処理は施されるもののどす黒くなった顔色がもとの明るい色に戻るわけではないため、エンバーミングの一環として、化粧を施す行程がある。いわゆる「死に化粧」というやつである。これが、本当に素晴らしかった。死化粧師の方が父の白髪の増えていた数ミリカットのまだら禿げの髪を黒く染めて、生前ほとんど整えたことのない眉をほんの少し整える程度切りそろえ、頬や額や唇には化
2022年2月25日 19:10
それは、突然のできごとだった。近しい人の死に直面したとき、ほとんどの人がうろたえ、悲しみに打ちひしがれることだろう。私にとってもそれは、例外ではなかった。もうすぐ三十にもなろうというのに、親しい人であろうとなかろうと、誰かが死んでしまうということに対する免疫がまるでなかったのだ。それが、最も身近な肉親の衝撃的な死によって、否が応でも「死」への認識と理解をせざるを得なくなった。
2022年2月25日 21:50
四日前、父が死んだ。自分でも今、どんな気持ちでこれを書いているのだろう、と訳のわからない想いになるが、明日には父の肉体がこの世から消えて無くなるのだという事実に、断続的な不安感や動悸を覚える。漠然としている思考や感覚を書き出すことで、少し落ち着きたかったのだ。見た目は十分落ち着いている。父親の死に対して冷淡にも見えるほどに。けれども内側のところでは様々な感情が、意識
2022年2月27日 23:38
首から背中の真ん中にかけて、重だるくて仕方がない。呼吸が浅くなり、ときどきため息をつくように深呼吸をする。どれくらい泣いたかわからない。正直言って、今自分の中に湧き起こる感情や感覚があまり理解できていないでいる。九日前、父が死んだ。それは、青天の霹靂であった。「仕事、早退してこれる?」弟が言った。2021年12月4日、15時1分。最初は母からのLINE電話での着信。
2022年2月28日 20:15
実家の駐車場まで着くと、車両の上に赤いサイレンのついた白いワンボックスカーと警察のバイクが停まっていた。駐車場から家まで行く通路の真ん中には、叔父が呆然と立ち尽くしていて、私が帰るのを待っていてくれたようだった。私が抱きしめると、叔父は無言でそれまでこらえていた感情を開放するかのように、私を力強く抱きしめ返した。お互い少し泣いたあと「1階にいるからすぐに2階に行け。お前には
2022年3月2日 15:08
現場検証も終わりを迎え、気づけば夜になっていた。白い袋(納体シートというらしい)におさめられ、玄関とリビングにわたる床に置かれた担架に乗せられた顔の見えない父の体を目前にしたときには、あの大きな頭を前に、座り込み泣いてしまったけれど。それが本当に父の体だという実感はもちろんないまま、「これは父の亡骸なのだ」という頭だけの理解があった。担架に乗せられた父の遺体は、裏口から警察の
2022年3月2日 15:58
検視結果が出るまでの間、何時間か待った。どれくらい待てばいいか、というのも、遺体の状態によって変わるらしい。「状況によって、 今夜中に終わるかもしれませんが 日付をまたぐ可能性があります。 深夜0時までに連絡がなければ、 翌朝に連絡が来ると思ってください」待つ間、隣の祖父母の家で夕飯を食べ、みんなで待った。こんな状況で腹が減るわけもなかったが、それでも何か口にしないと、と
2022年3月2日 15:59
深夜0時近くなって、検視結果を伝える連絡が母のスマホへ入った。当たり前だが他殺などではなく、自ら命を絶ったと思われる、とのことだった。検視を終えた父の遺体は、葬儀場の霊安室へ運ばれた。こんな状況だから、しばらく家族一緒に居たほうがいいというのと、忌引きでお休みも頂くことになるだろうということで、妹が借りているアパートに服やらなんやらを取りに行った帰り、深夜1時ごろに葬儀場
2022年3月5日 18:44
亡くなった当日の夜中最初の父との面会の後に葬儀の手配についてスタッフの方と話した際「遺影をどうするか、決めてきてください」との話があった。「遺影の写真と、その他に 故人様のお写真を20枚までお預かりしまして それを、スライドショーにして お式の前にお流しします。よろしければ」せっかくだからと葬儀手配の打ち合わせ時間までにあまり多いとは言えない父の写真を12枚ほど見繕っ
2022年3月6日 15:29
葬式の手配を行った翌日には「エンバーミング」という処置を、父の亡骸に施してもらった。日本でいう死に化粧に近いものがあるが、もっと医学的に体を衛生的に綺麗に保つための処置である。日本ではまだそこまで認知度の高いものではないようだが、アメリカでは、葬儀を行う人の90%以上がこれを行うと言われており一般的となっているものなのだそうだ。(それぞれの土地の風習や、信仰する宗教にもよ