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まな板なしで魚をさばいて野菜を切る⁉~アフリカマラウイ流の料理の仕方~

「この魚食べたいんだけど、魚買うから誰か調理してくれない?」

「うちに来れば、おれが作ってやるよ」

マラウイ湖沿いのサリマ県は、魚がたくさん獲れることで有名な町。そのサリマ県に教育実習中の学生を指導する2泊3日の出張に行ったとき、庶民の台所の魚市場に行ってみた。

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泊まっていたロッジで出される料理ではなく、地元の庶民の味を味わいたくて、魚を売っている人たちにダメもとで聞いてみた。すると、すぐに名乗りをあげた男がいたのだ。

夕方、待ち合わせして、おそるおそる彼の家についていった。少し歩くと、レンガ造りでトタン屋根の家に着いた。家を案内されて、家族を紹介されているうちに日も暮れて、辺りが真っ暗になった。電気はソーラー充電の小さなライトのみ。

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「じゃあそろそろ始めようか」

そう言うと、水を入れたバケツで魚を洗い、おもむろに片手で魚をつかみ、もう片方の手に握った包丁でウロコを取り始めた。まな板はない。小さなソーラーライトを口にくわえて手元を照らす。

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ウロコだけかと思いきや、その勢いで包丁を巧みに使い、魚を手につかんだまま尾を取り、ひれを取り、腹をさいてはらわたを取り、ついにさばき切ってしまった。月明かり、星明かりとソーラーライトの薄暗さの下。

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現地で「バターフィッシュ」と呼ばれるこの魚の調理法は、魚がひたひたになるくらいの多めの油で煮る、アヒージョのようなもの。

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油で魚をグツグツ煮ている間に、次の作業が始まった。

トマトを手の上にのせ、まるで日本の豆腐でも切るかのように鮮やかに切り始めた。見ているこっちがヒヤヒヤするのだが、マラウイ人はおかまいなし。

ちなみに、トマトは手の上で切るのがマラウイでは普通だ。逆に、トマトをまな板の上で切るのをマラウイでは見たことがない。

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トマトを切り終わったら、魚を煮込んでいる油の中に投入して、塩を振ってしばらく待つ。トマトと油がいい具合になじんで、おいしそうなソースになったら、魚のトマト煮込みの出来上がり♪

「バターフィッシュ」のコクがトマトの酸味・うま味とマッチして、調味料は塩だけでとてもおいしくいただける。食べ方は他のおかずと同じで、手を使って主食のンシマと食べる。手で魚をちぎって、とろけたトマトと一緒に主食のンシマに乗っけて口に放り込む。あっという間に平らげてしまった。

水が貴重で、電気がない生活のマラウイだからこそ、「薄暗い中、手の上で切る」スキルが自然と身についているのだろうが、もし日本の家庭科の授業で紹介したとしたら、危険すぎて「やってはいけない!」方のお手本になってしまう。でも、マラウイではそれが標準だ。

まな板を使わない分、洗いものが少なくて済むし、ソーラーライトしかつけていないから、SDGs的調理法と言えるかもしれない。

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