「流浪の月」の感想を語るのは不可能
人間は3大欲求を持ち合わせているというが、わたしは睡眠欲が10割を占めていると言ってもいい。
そんなわたしが睡眠よりも優先することがある。
それが読書だ。
ジャンルは物語小説一本。
1ヶ月に3~4冊の本を読むのだけれど、数年ぶりに自分の中でヒットした小説がこちらの作品↓↓
2020年の本屋大賞 大賞受賞作品 著:凪良 ゆう さん
「流浪の月」
▼以下、作品紹介文
せっかくの善意を、
わたしは捨てていく。
そんなものでは、
わたしはかけらも救われない。
愛ではない。けれどそばにいたい。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。
新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
読書好きとして、本屋大賞は毎年ノミネート作品からすべてをチェックするのですが、その中でも群を抜いて良作だったという感想。
音楽でも本でも、個人の好みが評価に大きく反映されるので私個人の感想としてですが、これは多くの人に読んで欲しい作品だなと。
正直、あらすじだとあんまり惹かれなかったんですけどね。
なんか障がいのある恋愛とかの話かなって。
だから入りは大賞受賞作品だし読んどくかーくらいの気持ち。
でも読み始めたら夢中になって、5時間ほどで一気読み。
そして読み終わってからの余韻がすさまじかった。
この本のメインテーマは
ー事実と真実は違うー
ということ。
登場人物の2人は、世間から見たら
”幼女誘拐犯と、その被害者”
それが事実 でも真実は違う
それでも、真実は人々の善意によって打ち消されてしまう
読了後の感想は以下。
苦しかった。
たくさんの本を読んできて、面白かった、感動した、という感想の本は多いけれど、苦しかったという感想を持ったのはこの作品が初めてかもしれない。
感想を言葉にしようとすると、どんな言葉を使っても伝えたいことの半分も伝わる気がしないし、どこかうすっぺらくなってしまう。
どんな本なの?って聞かれても、帯に書かれているあらすじ以上のことは教えたくない。
むしろ、だからあえてあらすじがあんなにあっさりと書かれているのかとさえ思う。
簡略化してこの本を説明できる気がしないし、わたしなんかの言葉ではこの作品の良さを伝えられる気もしない。
これは読むのが1番だよとしか言えない。
本好きとして、良作だと思ったものは紹介したいし、興味を持ってもらえるようにあらすじをうまくまとめたり感想を言ったりしてきたから、こんな感想を持ったのも初めて。
真実から離れたとこから向けられる善意は、ときとして悪意よりも相手を苦しめる要因になりうること。
親切心からやっていることであっても、それを純粋な善意として受け取るかは受け取り手次第であるということ。
自分がやさしさとして向けているものが、本当は相手を深く傷つけているかもしれないということ。
悪意よりも、無知や先入観、思い込みから発せられる言葉が1番怖い。
そしてそれは善意から向けられるものだから、それを迷惑と思ってしまう自分が悪いと思っちゃうんですよね、たしかに自分が傷つけられているのに。
もともと人間関係の構築が得意な方ではなかったけれど、改めて人との接し方を考えさせられる本でした。
この本に救われた人はきっとたくさんいると思う。
今の世の中は、メディアやSNSで自由に情報が飛び交っていて、何が真実で何が偽りなのか、何を信じたらいいのかを考える機会は多いのに、実際にそれを意識している人はとても少ないと思う。
目にした情報の中で、報道された内容は無条件で真実だと、根拠のないものは、信じたいと思ったことが真実、信じたくないことは偽り、そう判断していないだろうか。
わたしも、気づかないうちに自分で作ったフィルター越しにものごとを見ているのだろうな。
そんなこと今まで考えたことも無かったけど、そうなのかもしれないと考えさせてくれた作品。
大賞受賞、納得。
読書中、登場人物には自分の中で想像するビジュアルとか声があるから、それにはまらない俳優さんや女優さんがキャスティングされるとイメージと違うなと勝手にがっかりしたり、文章だから感じ取ることのできる繊細な情景や心理描写が感じにくかったりするので、わたしはあまり本や漫画の実写化が好きじゃない。
それでも、今回の作品はぜひ実写化して欲しいと思った。
キーキャラの男性は、BUMP OF CHICKENのボーカルの藤君か米津玄師さんだと嬉しい。
どちらも俳優さんではないので不可能だろうけど。
イメージにピッタリ。
女優さんは、志田未来さんがいいなぁ。
そして主題歌は絶対に菅田将暉さんの「まちがいさがし」が良い。
この歌の歌詞ほど、この作品にマッチしたものはもう作れないと思う。
本を読むことが好きな人も、そうじゃない人も、ぜひ読んでほしいと思える作品に出会えたことに感謝。
読み終わった後には、表紙に使用されているアイスクリームの写真ですら切ないと感じさせるくらい世界観にどっぶり浸れる、いい本でした。