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📚29【ミライの源氏物語】で読みにくさを越えてみる 783
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ミライの源氏物語
山崎ナオコーラ(1978年生、國學院大学文学部日本語学科卒業、2004年「人のセックスを笑うな」でデビュー)
淡交社 183頁
2023/3/13初版 月刊誌なごみ初出
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はじめに
いやはや勘違い。
タイトルを見て「山崎ナオコーラ訳源氏物語」だと勝手に思い込んでいた。
山崎ナオコーラ氏といえば、自らの性別を明かさず(でも子どもを出産している。子どもの性別も明かしていない)、「人間は何故カテゴライズするのか?」
を考え続ける作家というイメージ。
きっとジェンダーや身分に縛られない「ナオコーラ版源氏」に出会えると思っていた。
ハヤトチリをしてしまいましたわ。
構成
目次をご覧いただきたい。
「末摘花」で始まる登場人物名には「ルッキズム」等と、なかなか今風なワードとセットされている。
マザコン•ロリコン•不倫•性暴力……
まぁ、何と賑やかなことよのぉ。
平安時代の読者にはできなかった
「おいおい、アウトですよ‼︎」
「それって誘拐やん‼︎」
という社会規範に沿った読み方を、ナオコーラ氏がガイドしてくれる。
勿論、原文とナオコーラ訳も併記されている。
次章から、社会規範をひとつずつ取り上げ、「こんな読み方をしたら、面白い読書になるかもしれません。ちょっと違う読み方をしてみませんか?」といったご提案をしていきます。
読者のみなさまと一緒に、現代における『源氏物語』の読書について考えたいです。
読み方
知っていた方が興味深く読めるけれど、本書に限っては、覚えなくても大丈夫なのが「『源氏物語』人物相関図」。
私が子ども向けの「源氏物語」を買ったのは小学生のとき。
見慣れない名前ばかりの相関図は記憶に残らなかった。
なんとな〜く頭に入ってきたのは「あさきゆめみし」を読んでからだったと思う。
「今、読みにくさをどうやって越えるか」は是非とも初めにお読みいただきたい。
著者の考え方や、源氏物語への向き合い方がよく解る。
千年を超えたからこそできる読書の楽しみ方を教えてくれている。
平安時代に近づく、という行為ではなく、今だからこそできる、という行為をやってみよう、そういう読書を目指そう、と私は考えるようになりました。
文学は、「善い行いを学ぼう」という学問ではありません。(中略)不倫小説を賛美したからといって不倫を肯定することにはなりません。不倫小説を読むのは、不倫を勉強するためでも、不倫を研究するためでもありません。読書を楽しむためです。
著者が心血注いだ通り「ルッキズム 末摘花」から読むのが王道なのでしょうね。
私はどこからお読みになっても構わないと思う。
夕顔が好きだから「貧困問題 夕顔」からでもいいし、マウンティングが気になるから「マウンティング 六条御息所と葵の上」からでもいいと思う。
長短はあるけれど、どれも提案→原文•訳文→解説の体をとっている。
チャプターの中できっちりと完結しているので、それぞれ違った短編を読むように楽しく気楽に読める筈。
最後は「受け身のヒロイン 桐壺更衣と浮舟」で締めてほしい。
「文学は旅」と知り、迷い道を楽しみ続けたいから。
現代の物語はヒロインの主体性を重んじるものが主流です。けれども、未来の物語はそれともまた違うものに変容していくでしょう。
ヒロインが主体性を持つ、ということが物語というものの答えだとは、私には思えません。すべての物語がその一点を目指すべきだとは考えられません。
実は、文学には目指すところも答えもありません。ただの旅なのです。
人間はみんな、未来へ向かいます。これまでとは違う道を探します。それは、過去の否定ではありません。これまでも道を愛しながら、この先の迷い道を楽しむのです。
おわりに
勘違いから読み始めた本書。
源氏物語だからというだけで、
「高貴で雅な想いを抱かなくてはならない」
と思わなくても大丈夫。
平安時代の風俗に明るくなくてはならないと思わなくても大丈夫。
口には出さずとも「マザコンやん‼︎」「ロリコンやん‼︎」「やりたい放題やん‼︎」「イケメンだから許すけどさぁ」という想いを、現代の社会規範のもとに引っ張り出し、ナオコーラ節で解体。
身も蓋もないどころか、千年のときを超え状況が変わっても、好いた惚れたの本質の変わらなさよ。
しかも文学から答えを得なくて構わないなんて、はっきりと書いてくださってありがとう‼︎
あなたにとっての感動作に、私が涙を流さないことがあったとしても、どうかお構いなくご放念くださいね。
こんなに手軽で面白いガイドブックがあることだし、先ずは平安時代に旅に出てみましょ‼︎
惚れられたら困っちゃうけどね、うふ……
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