📚5【母は死ねない】と、なぜ思ってしまうのか?
母は死ねない
河合香織(1974年生。ノンフィクション•ドキュメンタリー受賞歴)
筑摩書房
2023/3/10初版
産後直ぐに生死の境を彷徨った母
子どもを殺された母
難病の子どもを育てる母
精子提供で出産したレズビアンカップルの母
特別養子縁組で子どもをもち、島嶼部に転居した母
虐待されて育った母
DVやモラハラで自尊心を失った母
全て父親の違う子どもを5回妊娠した母
子どもが失踪し、遺骨が発見されたが失踪の経緯が全く不明な母
幼い頃の性的な体験を、娘に伝えることにした母
生き抜こうともがいた挙句に死を選んだ母……
本書での母は「子どもをもった女性」のこと
母と言っても「誰かの妻」とは限らないし、「自分で産んだ」とは限らないし、「一緒に生活している」とも限らないし、今もその子どもがいるとは限らない
本になるくらいだから特別な人達?
否、運命の歯車のどれか一つが違えば、この母は私だったかも知れない
これから経験するかも知れないし、既に経験しているのかも知れない
子ども達はとっくに見切っていたのに、モラハラ元夫と積極的に離れることをズルズルと引き延ばした結果、仮面家族をやっている自称毒親育ちの私
モラ元夫に恨みはない
母と離れるキッカケを作ってくれたし、3人の宝物と出会えたし、書くネタには困らないから
同居をしているのに「母とは接点ゼロ希望」を堂々と公言する長女
学生時代に母と喋ることをやめた長男
モラ元夫と離縁する前に、早々と一人家を出て住所を教えてくれない次男
私はいつも3人に片恋中
巣立つならどうぞ、引き留めないから
相談にはのるし、応援はする
私は、死ぬまで勝手に子どもの応援団長のつもり
自虐的に「仮面家族」と言ってしまう
便利な言葉だというのも理由だけれど「家族とはこういうもの」という思い込みが私にあるからかも
他者から言われると、自分が傷つくから先回りして言うのかも
長女にしろ長男にしろ、生理的に無理な母ならとっくに離れているだろう
次男だって用もないのにベランダから見えた花火をLINEで送ってきたりはしないだろう
……と、勝手に思っておくことにする
読み始めは、母が育った環境や各々が置かれた状況に、ただただ驚き興味を惹かれた
世間を震撼とさせた事件や事故の当事者もいるし、過酷な世間の目と闘っている母もいたし、静かに受け止めている母もいた
読了後は著者と同じ境地に辿り着いた
自称している「毒親育ち」について、時々ご意見•アドバイスをいただく
有り難く拝読し、思い切ってご指摘下さることに感謝している
幼い頃から家を出るまでの私の体験や心情を、誰かに理解してというのは無理だと思う
もっと過酷な状況を体験した人からは「甘い」と思われることだろう
それでも「毒親」という言葉は私にとって救いになった
今アルツハイマー型認知症の母に嫌な記憶は残っておらず、被害者(だと思い込んでいる)の私はもどかしくも、「赦す」という過程を努力して踏まずに済んだことに感謝している
各ケースが章立てになっていて、読みやすい
家族関係に悩む人、母として自信が持てない人は読むと良い
興味本位で読むのも良いし、子どもの立場で読むのもありだと思う
参考にならなかったとしても、「そんなケースがあるのね」と知るだけでも価値はあると思う
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