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7・8月に読んだ本

木漏れ日が秋の色になってきて、まだまだ毎日あついけど季節は着実に移り変わっているのだなあと感じる今日この頃。
今年の秋は、お月見系の食べ物や飲み物を少しずつ制覇していこうと計画しています。猿田彦珈琲のお月見ブレンドおいしかった☕️

はじめに

今回は7・8月に読んだ本の記録と、いま読みかけの本たちについて書きます。
7月はまるごと試験期間で本を読む時間がなかなかとれず、代わりに8月の夏休み期間はいっぱい自由に本を読むことができました。青春18きっぷでのんびり旅をして、その道中で読んだり、おばあちゃんのおうちに遊びにいって、お留守番する1人の時間に読んだり。個人的に、秋より夏のほうが読書が捗る気がします(あついのが苦手なので引きこもってるだけかも)。

前回までのnoteはこちらから↓

読書記録のシリーズは今回で3つ目になりますが、いつもと同じ説明を置いておきます。このシリーズは、読書感想文ではなく、ゆるっと読んだ本を提示しつつわたしの気持ちを書き留めていくものです。
肩の力を抜いて書いているので、みなさんもぜひのんびりした気持ちで読んでください。




①『思考すること、それはノンということである』 ジャック・デリダ

デリダというフランスの哲学者が、若い頃に大学で行った講義のメモをそのまま翻訳する形で書かれています。
「考えるとはなにか」という素朴な問いから始まり、ウィ/ノン(フランス語で、イエス/ノー)とはどのように異なっているのか、どのような性質を持つものなのかなど、さまざまな哲学者を参照しながら根源的な問いに潜っていく一冊。

この本は、7月いっぱいかけて、試験の合間にちまちまと読み進めていました。
デリダが特段好きな哲学者というわけではないけれど、自分のなかではフランス思想に比較的関心があって、仏検の勉強のモチベはここからきていたところも大きいかなあと思います。

ガイド(授業での導入とか予備知識とか)なしに哲学書を読むのはほとんど初めてで、どきどきしながら読みました。講義メモなおかげもあってか意外と読みやすく、かつフランス語をある程度勉強しているので言語感覚的な部分も親しみやすくてするっと読めました。「考える」ということについて考える深みをちょっとは掴めたんじゃないかなと思います。

いまさらだけど、残りの夏休みはどんどんこういうものにチャレンジしていきたい。


②『影に対して』 遠藤周作

この本は、2020年に遠藤周作文学館の資料の中から発見された未発表作品で、遠藤周作の死後に見つかった初めての完結小説です。
母親との関係や気持ちをめぐる自伝的小説で、遠藤周作の誰にも言えなかったほんとうの気持ちが垣間見える一冊でした。

この本は、いつか忘れちゃったけど院生の先輩が紹介してくれて、気になったので読んでみました。

遠藤周作は、わたしは大学生になってからよく読むようになった作家です。哲学の話をしているとよく登場するということもあるし、わたし自身の問題意識?関心?とも重なる部分が多いので、心が元気なときに一気に読むようにしています。
個人的なお気に入りは、やっぱり『沈黙』。どうしても忘れられないし、ほかの作品を読んでいてもつい思い出してしまう。

多作なのでまだまだ読んだことのない本ばかりですが、これからもタイミングを見つけて読んでいきたいなと思っている作家です。


③『ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか』 武井麻子

笑顔で対応する受付の仕事や、やさしい看護師、悲しくなくてもお悔やみをいう葬儀屋など、自分の感情をこえて場面に適切な感情をもつことが求められる仕事を「感情労働」といいます。
このような人たちがしている「労働」とは一体なんなのか、彼らの存在はなぜこんなにも求められているのか、心をすり減らさないためにわたしたちはどう生きていけるのか。感情労働をめぐるさまざまな問題を扱った一冊です。

卒論でヤングケアラーについて考える中で、相手の期待に応えること・相手からのケアの要請を汲み取ることってなんだろう、というぼんやりとした問いがあり、それについて考えてみたいと思ってこの本を手に取りました。

この本を読みながら、わたしがこれまで考えてきたことや感じてきたことは間違いじゃなかったんだな、と救われた気持ちになりました。
ケアすることのしんどさとか、誰かの感情のサンドバックになることの意味とか、ケアを求める人たちの置かれている状況とか。そういう自分のなかだけでぐるぐるしていたことが、すでに誰かを共有できているということがうれしい気持ちでいます。


④『少女』/『告白』 湊かなえ

湊かなえは、去年秋頃に『母性』を読んで以来、とても久しぶりに読みました。
たまに「小説はあまり読まないですか?」という質問をいただきますが、わたしはもともと小説ばかり読んでいて、小説読むのはとっても大好きです。最近は大学の関係でどうしても学術書や新書を読むことが多いけれど、こうやって長期休みに小説を読むことをたのしみに生きています。

夏休みになってから本を読むことになんとなくしんどさを感じていて、頁をめぐる手が重い時期がありました。研究のため、勉強のため、自分のため、、、なにかしらの目的意識を持って本を読むのに疲れてしまって、ただあの頃のように没頭して本を読みたい、と思ったときに、ふと湊かなえの世界観を思い出して本屋に走りました。
自分というものを失って、物語のなかに吸い込まれていくような感覚がだいすきです。


⑤『新世界より』 貴志祐介

舞台は1000年後の日本、神の力(念動力)を手に入れた人たちが、平和で理想的な町で幸せに暮らしている。人類はどのように念動力を手に入れたのか、町の外にはどんな世界が広がっているのかーーー主人公らが禁忌を犯しながらその真実に迫っていく、壮大なSF小説です。

個人的に、ほんとうに大好きな世界観で、久しぶりに寝食を忘れてのめり込むように読みました。息を止めて読んでしまって、読み終わってしばらく頭がガンガンしたくらい。
『獣の奏者』に代表される上橋菜穂子さんの作品や、『虹色ほたるー永遠の夏休み』あたりのファンタジーが好きなひとにぜひ読んで欲しいです。


⑥『カフカ断片集』 カフカ

カフカは7月・8月の旅のお供として、一緒にいろんなところへ出かけながら読みました。旅にはエッセイか詩歌をもっていくと決めていて、毎年夏になると旅のお供用に本を探しています。

この本は、短編集でも小説でもなく、カフカのノートやメモに残された言葉のかけらたちを集めた断片集です。
割れたガラスの破片のように、小さくて綺麗で、それでいて刺さったら抜けない、そんなカフカの魅力をぎゅっと詰め込んだ一冊。

ひとつだけ選ぶとすれば、わたしは[心を剣で突き刺されたとき]がいちばん好きです。短いので引用しておきます。

心を剣で突き刺されたとき、大切なのは、じっと目をそらさないこと、血を流さないこと、石のように冷たくなって剣の冷たさを受けとめること。刺されたことによって、刺された後は、もう傷つかなくなること。

カフカ、『カフカ断片集』、2024、新潮社。

⑦『つながりの作法-同じでもなく違うでもなく』 綾屋紗月・熊谷晋一郎

つながりすぎる身体ー自閉症と、つながらない身体ー脳性麻痺の、それぞれの「つながり」の困難さについて考えていく。
おたがいが違うとわかっていて、そのちがいを認めたうえでなお、人はどのようにつながりうるのかという問いに挑んだ一冊です。

1年ちょっと前くらいに大学の先生に勧められて、ずっと読みたいなあと思いながら積読していた本。卒業する前になんとか手をつけられてほっとしています。

綾屋さんと熊谷さんの二人の身体が地続きであるというだけでなく、わたしと彼らもまた地続きの存在であるということ。わたしとみんなも、きっと地続きの存在であるということに改めて気付かされる本でした。
『あらゆることは今起こる』などと合わせて、当事者研究の入門としてもおすすめです。


⑧『ケアの倫理ーフェミニズムの政治思想』 岡野八代

ケアについて卒論で扱うなら、ケアの倫理についてもう少し勉強しておきたいと思い、夏休みの間に何冊か関連書を集めています。

この本は、フェミニズムが作り上げてきた政治思想である「ケアの倫理」について、その歴史や概要を説明する一冊です。すこし長いですが、フェミニズムの全体像をつかみながらケアの倫理について学ぶことができました。

男性の構築してきた社会、ないしは哲学・思想のなかで、耳を傾けるに値しないと思われてきた女性の声。
哲学を学ぶなかで、その枠組みに取り込まれていく自分というか、「これが哲学史的に正しいことなんだな、こんな考え方ができるようになりたい」と思ってしまう自分がいて、
でもその一方で、自分自身の経験をその枠組みで理解することができなかったり、違和感をもったりすることが確かにあって、それを忘れてしまわないようにしようと改めて思った。

自分が女性であるということにも向き合いつつ、ケアについてもっと深く広く考えていきたいです。卒論がんばる。


おわりに

最近読み終わった本の、感想未満コメント以上みたいな気持ちを今月も残してみました。

夏休みは文字通り本の虫になって、読みかけの本を大量発生させています。読書ブイログとか撮ってみようかなと思うくらいに本ばかり読んでいる。今回紹介したのは読み終わったものだけなので、手を付けた本は実はほかにもたくさんあって、そういうのも本当は共有出来たらいいなと思っています。

もうすぐ2学期が始まる人も多いと思いますが、大学生はまだ夏休みなので存分にたのしみます。没頭できる小説があればぜひ教えてください。


【おまけ】いま読んでる本

最後に、今回も読書案内の代わりにいま読みかけの本をいくつか貼っておきます。
積読を全然消化できていないのに、つい図書館で新しいもの借りてきてしまい、どんどん山が大きくなっていく毎日です。子どものころ、死ぬまでに世界中の本を読むことが夢だったことを思い出します(むりだね・・・)。


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