【散文詩】『ふぁっしょんの哲学(一)』
『ふぁっしょんの哲学(一)』赤黄緑紫
洋服の細部にはじつは丁寧珍重に
敬意を払うかの如【お名前】が付いている
子どもの頃に誰も教えてくれなかったのが
今になって不思議なくらいに、素敵な。
たとえば、制服のプリーツスカート
360度にくるりとついてる大群のヒダ
あれ、一つ一つを【タック】というらし。
そして、この【タック】よりももっと、大袈裟に
理屈を抜きにぐちゃりと寄せて抱き締めたシワの束
あれを遂には【ギャザー】というらしー。
はたまた、身体に布を沿わせたいという
我儘が起こるーそんなとき
小粋に布を切ったり貼ったり
千切り絵よりも色っぽく試行錯誤すれば
そこに現る如実な線達のことを
一歩迫って【ダーツ】と呼んだ
そんな細やかな“諦め”にも似た気遣いがが
この世の【ファッション】にはあるらしいのよ
*みてらっしゃいな、よってらっしゃい*
いっしょくたにして散りばめよう
【ギャザー】と【タック】に
【ダーツ】を加えてー星空の様にー
それはなんて素敵なことやろ
パレードかサーカスみたいに
心一面がわくわく、してまう
アスファルトを何の気なしに覆い隠せる
櫻の花弁の正義感、というか。なんというか、
そして、はたまた
散りばめてある花や星まで
【ダーツ】や【タック】【ギャザー】に差し替えたならー、そこら一面は忽ち小宇宙=【ミクロコスモス】なり。
=条件は=
・一着の中に終わりと始まりが凝縮されていること
・生も死も一挙に含んでいること
・ピカソのキュビズムみたいに
一面にも全面からの光景を含むこと
・纏う一人の人間を
肯定してくれる力を持つこと
*
2025
akakimidorimurasaki