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映画「アリスとテレスのまぼろし工場」感想※試写会

こんにちは、ねいねいです。

Filmarksの試写会に当選したので行ってきました!試写会版っぽいですね、公開したら本編とちょっと違うのかも。

《ご注意》
※途中からネタバレありです。


🌈✨「アリスとテレスのまぼろし工場」とは

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」「さよならの朝に約束の花をかざろう」の岡田麿里監督。

哲学者のアリストテレスの「人間の本性は"知を愛する"こと」や、アリストテレスの思想をふんだんに盛り込んだ、MAPPAの素晴らしい映像で贈る、切なくも希望を描いた青春物語。

《あらすじ》
突然起こった製鉄所の爆発事故により全ての出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす中学三年生の正宗。いつか元に戻れるように、住人たちは変化を禁じられ鬱屈した日々を過ごす中、謎めいた同級生の睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは喋ることのできない、野生の狼のような少女。二人の少女と正宗との出会いが世界の均衡を崩していき、日常に飽きた少年少女たちの、止められない<恋する衝動>が世界を壊し始める。

https://filmarks.com/movies/97786

🌈✨感想

MAPPAの初オリジナル劇場アニメーション作品ということで気になっていましたが、期待通り映像美が素晴らしい。町並みや廃墟、カメラワーク、食い入るように楽しめました。

アリストテレスの思想がテーマになっているぶん、とても奥が深い映画です。

内容はいろんな意味でちょっとコア層向けな独特な印象は受けましたが、アリストテレスの前提知識がなくても純粋に岡田麿里監督味のあるストーリーを楽しめると思います。

哲学とは何か?生きるとはどういうことなのか?こういうテーマの映画は好きなので、いろいろ考えたり感じたり、そういう意味でもすごく勉強になるので観てよかった作品になりました。

https://voiceup.jp/maboroshi/

🌈✨アリストテレスとは

タイトルからして、アリストテレスの思想をテーマにしているこの作品ですが、検索するととても難しいことばかり出てくるのでめちゃくちゃ簡単に、知っていれば映画も楽しめそうな部分を紹介します。

アリストテレスは「万学の祖」と呼ばれるほど、哲学を始め、自然科学や政治学などさまざまな学問に影響を与えたすごい人!

《ご注意》
ここから先はアリストテレスの思想について紹介します。映画のテーマに直結しているので、知ることで映画の内容が読めてしまうかもしれません。

純粋に映画を楽しみたい方は、映画見た後に読んでもらえると嬉しいです。以降は自己責任でお読みください(꒪ཫ꒪; )

★哲学とは?

存在とは何か?を追求する学問です。存在すること、つまり生きるということはどういうことなのか?を映画で体験できるようになっています。

★アリストテレスの師匠プラトンの思想

アリストテレス思想の説明の前に、師匠のプラトンの思想も映画に関係していたので紹介します。

プラトンの思想は、物事の最善を追求すべきだと、理想主義的な考えをしています。

プラトンは「イデア論」を提唱しているのですが、このイデアというのが、"完璧なもの"を指します。"完璧なもの"なので劣化変化もしません。

地球にあるものは、永遠に美しい"完璧なもの"はありません。よって、プラトンはイデアは目に見えぬ、時空を超越した「天上界(=神の世界)」にあると考えていました。※神が絶対的な価値観を持っているという時代の考え方です。

「イデア論」とは、存在の本質、現実世界で目で見えているものはあくまで本質の影、本質はイデアである。

★アリストテレスの思想

アリストテレスの思想は、物事の善悪の中間を最善とする、現実主義的な考えをしています。

「人間の本性は知を愛すること」「物事の本質は個々に内在するもの」と提唱しています。

★アリストテレスは様々な部門の基礎を築いた

  • 論理学
    ①人間はみんな死ぬ。②太郎は人間である。=つまり太郎は死ぬ。ある2つの事実から結論を出す方法を生み出しました。

  • 形而上学(=第一哲学)
    哲学とは何か?を研究すること。

  • 自然学(=第二哲学)
    算術とか物理学を研究すること。

  • 倫理学(=道徳哲学)
    何故その行いが善いとされるのか?何故そうすべきなのか?を研究すること。

  • 政治学
    人々が生活するためにどのような政治を行うべきかを研究すること。

  • 詩学
    芸術全般を意味しています。

★二元的宇宙像

アリストテレス自然学では、月下の世界は土・水・空気・火の四元素より成り、それらは相互に移り変わることが可能としている。この月より下の常に転化して生成・変化・消滅を繰り返す世界「地上界」と呼ばれる。それに対して月とそれより先のエーテルよりなる世界では決して転化することがなく、生成や消滅は見られない。この不変の世界「天上界」と呼ばれる。彼はそれぞれの世界は別な法則に従っていると考えた。この考え方は二元的宇宙像(論)と呼ばれている。

https://korechi1.blogspot.com/2020/10/blog-post.html

《補足》
※四元素は、例えば、水が水蒸気(=空気)になるように、相互に移り変わることが可能。月下の世界=地球のこと。
※エーテルというのは第五元素。地球以外の天体を構成する元素のことを指している。つまり「天上界」は、地球とは別の天体、世界のこと。
※宇宙の在り方についての昔の考え方です。

映画を見たあとでも、アリストテレスのことをいろいろ調べてみると面白いです。かなり簡略化して説明したので、さらに知りたい方はとても分かりやすい記事を見つけたので、良かったらこちらも見てみてください。

🌈✨感想と世界観の考察と解説(※ネタバレあり)

★世界観の考察と解説

あの世界は、神様が作った「理想のタイミングの世界だ」とおじいちゃんが言っていました。まさにアリストテレスの師匠のプラトンの理想主義的な世界のことを指してるんだと思います。

この理想主義的な考えが、キリスト教に大きく影響を与えているのですが、映画の中でも佐上というキャラクターを宗教的に描いていましたね。

佐上は悪者っぽく描かれていましたが、実は最初から世界の仕組みに気がついていて、私欲からではありますがあの世界を守ろうとしていたのですね。

月とそれより先のエーテルよりなる世界では決して転化することがなく、生成や消滅は見られない。この不変の世界「天上界」と呼ばれる。

https://korechi1.blogspot.com/2020/10/blog-post.html

おそらくあの世界は、アリストテレスが考え出していた二元的宇宙像のエーテル(第五元素)からなる不変の世界のことで、プラトンの思想にあった、"イデア(劣化も変化もしない完璧なもの)は天上界(=神の世界)にある"まさにこのことだと思います。

ここで、哲学、存在の本質(生きることの意味)を考えます。あの世界では不変がルールでしたが、人間があの世界に留まるには、生きる意味が問われる状態でした。

あの世界は神の世界にあるとされるイデア(劣化も変化もしない完璧なもの)を人間の本質としたプラトンの思想を元に作り出した、アリストテレスが私たちに見せた”まぼろし”です。

アリストテレスの思想「物事の本質は個々に内在するもの」

人間の本質って、あの世界にあるんじゃなくて、人間の内面にあるもの。それがもし"何か変化を求める"ことなら、それがその人の本質だよ。って、

つまり、プラトンの思想の幻を見せることで、私たちに不変の神の世界で生きることに対して哲学的にどう思う?とアリストテレスが語りかけてくるような世界観になってます。

アリストテレスの思想の良いところが「個々の内面にあるもの」なので人それぞれで、あなたにとっての生きる意味、本質は何?と考えされられるところです。

これが結果的にプラトンの思想を否定していることに繋がり「アリスとテレスのまぼろし工場」ってタイトルなんだと思います。

「天上界」をこういう形に落とし込んでいたのが「なるほど!」と感心しちゃいました、着眼点がとても良い。ここまででも十分面白いこの映画。

あの世界のどこが完璧なんだ?について、そもそも完璧なものってなんでしょうか?誰が決めるんでしょうか?神様?昔は神様が絶対的な価値観を持っているものと考えられていたので、これは神が作った!となれば誰もが納得していたのかもしれません。仮に土星や火星を神が作ったと言われれば神秘的なものに見えますが、そこに人間が住めるか?と言われると別の話で、あの世界にも同じようなことが言えるのではないでしょうか?

不変なもので美しいものはあるかもしれませんが、人間は成長すること、変化することが望ましい生き物なんじゃないかなと思います。知を愛することっていうのはそういうことなんだなと実感します。

花は綺麗に咲いてる時が1番美しいかもしれませんが、それは枯れることを知っているからそう思う。でも枯れてる時もまた別の、命の美しさがあると思う。哲学は奥が深い…

五実がとてもかわいかったです。ただ、閉じ込められていたのは結構ショックが大きかったです。何年何年も、まともに相手してもらえず、幼稚なまま育ってしまっていて…。

でもここも、そんな環境で育つことにも、人間の本質を映し出しているんだと思いました。学ぶことや他者と繋がって生きることって人間にとって大事です。

現実の世界へ五実を帰すことは、世界を滅ぼすことになるけどどう行動するのが正しいのか?(=それぞれの道徳)や、どう町のみんなをまとめるか?(=政治学)や、政宗の特技がイラストを描くこと(=芸術)だったりと、アレストテレスが築いた学問が満載に盛り込まれいた映画でした。

★岡田麿里監督の特徴

三角関係を織り交ぜたちょっと複雑な青春ラブストーリー。

予告の「政宗はわたしだけのもの。」って台詞、かなり性格悪そうに聞こえてたんですが、最後の最後に「五実には未来がある、だから1つだけ私にちょうだい、政宗の心を。政宗はわたしだけのもの。」(正確な台詞は忘れましたが)これには泣いてしまいました。

★タイトルに隠された単語

アリストテレスなのに、タイトルがわざわざ「アリス」「テレス」に分かれている件も絶対意味がありそうと思い調べてみました。

「アリス」はギリシャ語で「真実」と言う意味で、「テレス」は「情報・知恵の集合」という意味のようです。哲学は本質や真実(真理)を問うので、これでしっくりきますね。

タイトルには【真実と情報・知恵の集合のまぼろし工場】という意味も含まれているのかもしれません。

面白い言葉遊びを含んでいるのと、劇中では「アリストテレス」って単語さえも出てこなかったので、客観的に見たおもしろいタイトルの付け方をしていたと思いました。こういうところ、好きです。笑

★オオカミについて

何故オオカミなのか?も関係ありそうなものを調べてみましたが、1番しっくりきたのは、真神でした。日本での真神はオオカミの古名だそうです。

人語を理解し、人間の性質を見分ける力を有し、善人を守護し、悪人を罰するものと信仰された。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E7%A5%9E

あの世界における善悪は変化をすることなので、罰せられたと受け取るのがよいのでしょうか。

政宗は絵がどんどん上手くなっていて変化しているのに何故亀裂が入らなかったのか?

園部の失恋や、仙波のDJの夢が叶わないのも、変化したからというよりは、生きる希望を失ったから亀裂が入っているように見えたので、そうとらえると、変化している人間の中でもオオカミ「人間の"性質"をちゃんと見分けている」のかなとも思いました。

★睦実と五実について

数字がついてる時点で何か意味を持ってそうなキャラクター。

「アリストテレス全集」という書籍があり、第5巻は「天界について・生成と消滅について」、第6巻は「気象論・宇宙について」というタイトルがついています。

五実に関しては、現実の世界の子なので、生成と消滅があるキャラクターなのでしっくりくる。

睦実に関しては、ハッキリと関係があるとは言い切れないものの、気象論も宇宙論も関係しそうな"空"に亀裂が入っていたことや、占星術の星の動きから未来を予測するような占いもアリストテレスが影響を与えていること、

現実の世界が大人になっている"未来"だったことも、何かしら参考にされている部分がありそうな気がしてます。

関係ないかもしれないけど、もしかしたら?ここらへん読んだら分かることがあるかもしれない。もし機会があれば触れてみたい( ˶´⚰︎`˵ )

🌈✨最後に

私の解釈や考察でしたが、公開されたらもっといろんな意見が出てくるのを楽しみにしてます。考察も結構無限大にできそうな話になっていてアリストテレスに詳しい方はもっとしっくりくる解釈ができるかもしれない。

私が見たのは試写会版なので、公開してからちょっと違う感想とかもあるかもですが、本編版も楽しみです、改めて比べて見直してみようと思います!

読んでくださり、ありがとうございました(っ'ヮ'c)♡

それではまた~

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ハイエナのねいねい
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