『情熱大陸』どしゃぶりを描く人を、どしゃぶりの心で見ていた。
今、雨が降っているからなのか。
ちょっとあの日に見た『情熱大陸』のことを思い出してる。
最近なつかしシリーズみたいになってきてますねわたしのnote。
バックナンバー、アーカイブスって、かなり好きなんです。
あの日、わたしはあの番組をみながら、いくらドキュメンタリー番組だとは言っても、そこにちゃんと演出はあるわけだからね、とかって思いながら見ていたら。
その中でとても、フラットなのにとても印象的な光を放っているひとを見かけた。
下田昌克さんだった。
その時、下田さんは、ビルを描いてほしいというオーダーを受けて、
彼が何をしていたかというと。
描き方のテキストをひもといたり。
それをぜんぶ映してもさらけ出してオッケーっていう方だった。
初めて出会う仕事の依頼人の方への名刺は、その場で手描きの名刺を、さらさらとそれでも、熱を込めて作成し。
『情熱大陸』のインタビュアーにインタビュ中に、ちょっと似顔絵描いていいですか? と人懐っこく距離を縮める人。
一目見てこの人、すっきゃわ~ってなりました。
「みんなが、当たり前に、水道や電気料金や、電話代など、公共料金払っていること思うと、ふ~~~と、気が遠くなることもあったよ」
って、何気なくおっしゃるところ。
もう、やっぱりこの人、すっきゃわ~ってなりました。
そしてその画家であるその方はある時、小説の挿絵を一生懸命に描いていらっしゃいました。
色を一切使わずに、黒だけで。
筆さばきというんでしょうか、指の動かし方が3倍速モードぐらいの感じで。
素早いとかいう描写では、その人の指の速さに追いつけないぐらい。
でも、その方下田さんは、やっぱりだめだな、描けてないなって。
みてる側から、素人目で、いやいや描けてるよ!描けてるやんってツッコんだぐらい。
そしたら、彼はやにわに立ち上がって、外へと向かって。
外はざーざーざーの雨で。
インタビュアーの人に、ちょっといいですか? と、傘をもってもらって。
懸命になにをしているかというと、一見そのインタビュアーの顔を写しているようにみえて。
なんで? なんだろうって思ったら。
彼は言いましたよ!
「ほら、雨を写したいなって。雨ってどういうものだったっけ・・・。」
って。
わ、なになにこのひと。
雨って雨だよね。いかにも雨だけど。
それを描けって言われたら、ひるんでしまったみたいで。
その瞬間、三度(みたび)わたしはこの人、すっきゃわ~ってなりました。
挿絵に描きたい雨を描くために、ちゃんと雨の降っている土砂降りの外にまで出て行って、写真に収めるだなんて。
もう唖然として。
はじめて『情熱大陸』でみた彼の事を、もう今で言う「沼」になってしまって。
そして、後日。
彼が挿絵を描いていた作品が、母の読んでいた愛読していた月刊誌に掲載されていたので。「文藝春秋」ですちなみに。
ページを開きました。
圧倒的な黒い線が、横に横におびただしく雨が描かれ、そこい折り重なるように、主人公の顔。
主人公の顔も、雨の線でこしらえたかのような輪郭線がそこにあって。
雨って。
わたしにとっての雨って。なんだろうって、絶対に思わないと思う。
立ち返ることもなく、記憶によって記憶すらも手繰らないで、描くだろう。
わかったつもりでいるんだろうなって思った。
だから、雨が降ると思い出す。
土砂降りの雨ざーざーざーの中。
何枚もシャッターを切る画家下田昌克さんの笑っている顔。
そしてその『情熱大陸』を見たつぎの月曜日。
朝起きた時から、ずっとなにかの余韻が残ってる気がしてならなかった。
よくよく考えていたらその人、下田さんだった。
よく、好きな人と会った次の日って、その人の言葉とか感触が残っているけれど。
まるで、そんな感じだった。
下田さんに実際に出逢ったみたいに、濃密な印象がじぶんのどこかに残っていて、くっきりと体感しているみたいでびっくりしたことを憶えている。
テレビの中の人をみてたちまち虜になってそんな経験をしたことは、たぶんあれ以来ないと思う。
その後の下田克昌さん。面目躍如のご活躍です!
そして、今日もひとりごとにお付き合いいただきありがとうございました!
それは、やっぱり「情熱大陸」だけにはずせませんよねってことで、
エンディング曲、おなじみの葉加瀬太郎さんのエトピリカです!
では、どうぞお聞きくださいませ♬
嘘ついた 翌日の朝 降りやまなくて
まじまじと 雨をみつめる どっちがふぇいく