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藤式部も驚く彰子の直球勝負/大河ドラマ『光る君へ』第34回・第35回

帝が『源氏物語』に興味を持ち、まひろ(藤式部)が藤壺で物語を書くようになった効果が少しずつ表れはじめた。

それでも、いまだにお渡りのない娘・彰子のこと、連続する不吉なできごとを思うと、道長はいてもたってもいられず、ついに御嶽詣みたけもうでへ。それを知った伊周は、不穏な動きを見せる。無事を祈るまひろ。ここのところ倫子も明子も登場しないせいか、「まひろって道長の妻だったかな」と勘違いするぐらい自然に見える。吉高さん&柄本さんが、以前よりぐっと歳を重ねた雰囲気を醸し出すようになっている。

伊周の企てを止めたのは意外な人物。その人物が道長にすり寄るためにやったのだと考えていたが、浅はかな想像だった。ごめんよ、隆家。花山院に矢を放ったときの「ひゃっほーーっ顔」(←語彙力なさすぎ 笑)が忘れられなくて、つい君を疑ってしまった。自分のせいで伊周の出世が断たれ、彼の人生を変えてしまったことに責任を感じている隆家。若い頃は無鉄砲に見えた彼の成長が、年月を感じさせる。一方、いまだ道長を恨み続ける伊周。この違いが、後の史実と重なっていくのか。

ファイト一発、御嶽詣でから無事に戻った道長は、休むことなくまひろの部屋へやってきた。進んだ物語を、急ぎ確認する編集者。頬づえをつきながら、その様子を眺めるまひろ。一応、目の前にいるお方は左大臣様なのだが。このシーンだけを見たら、長年連れ添った夫婦の空気感である。倫子に知られたときの反動が凄そうだ。

困難を極めた道長の御嶽詣。まるで修験道のように険しい断崖を登る様子は、宣孝がハデハデな格好で行ったイメージとあまりにも違う。悲壮感漂う道長と、流行りにのって俺も行ってみよっか!といった風の宣孝と。「あの人、確かに御嶽詣に行ったよね?」と自分に何度も問いかけてしまった。宣孝については元気な姿しか思い出せない(笑)。後になって、どんどん彼の器の大きさが響いている。道長の家族も、まひろの家族も、今のところ宣孝のおかげでうまくおさまっているのだから。

まひろは鋭い観察力で、周囲や自分の身に起きたことすべてを物語に生かしていく。第5帖「若紫」を読みながら、「お前も不義の子を産んだのか?」と問う道長。まひろの貫禄ある受け答えに、少々ムッとしているようにも見える道長くん。他の男と逢瀬を重ね、子を宿したと勘違いしたのだろうか。若ければそうかもしれないが、この年齢になってそれはなさそう。

賢子がわが子であることに気づかぬままなのか。しかし帰り際、少し立ち止まったのは気づいたという意味なのか。どっちだ。もし気づいたとしても、彼だってもう十分大人で、怯むことも悩むこともないのかもしれない。ただまひろと共有する秘密が増えるだけだ。

***

父親が談笑する姿など見たことがなかった彰子は、曲水の宴(100カメ面白かった!)で見せた素顔の道長に驚いていた。「殿御はかわいいもの」とまひろが伝えたとき、彰子の心に一瞬風がそよいだように見えた。今まで自分の気持ちをさらけ出すことなどなかった彰子が、父親の意外な姿を見たことで、わずかながら心に変化が起きた様子。そこに、まひろがすかさずフォローを入れる。彰子の中で、彼女への信頼がどんどん強くなっている。定子に清少納言が寄り添ったように、彰子には藤式部が寄り添う。鍵を無理やりこじ開けたわけではない。まひろの創作の源である観察眼が、そうさせたのだ。

「この娘はどうなるのだ」
「光る君の妻になるのがよい」

自分と紫の上を重ねる彰子に対して、まひろは「自分の気持ちを帝に伝えればよい」とアドバイス。しかし偶然やってきた帝に対し、泣きながら「お慕いしております!」とドストレートに勝負するとは、さすがに思っていなかった。誰にも心の内を明かさず、長い長い年月をほぼひとりぼっちで過ごしてきた彰子は、帝のことを一途に想っていた。月にいる直秀から、間違いなく「帰るのかよ」とツッコミを入れられたよね、このときの帝。

ようやく一条天皇と彰子が向き合った。しんしんと降るその日の雪は、定子の「大丈夫」という返事にも受け取れる。中宮の父親に、「今夜藤壺へ渡る」と宣言するのもなんだか不思議だけれど、道長は父親として安堵したに違いない。まひろとふたり、月を見上げて語るシーンは、穏やかで幸せそのもの。いやいや、志村~!うしろ、うしろ! だよ!! こわいよ、左衛門さえもん内侍ないし。菅野莉央さん!! 藤式部への嫉妬に駆られて、余計な事をしなければいいが。

次回は彰子懐妊。久しぶりに倫子が登場するが、今回もバレるバレる詐欺だろうか。予告にはお怒り気味のウイカさま@清少納言の姿も。あんなに嫌っている道長にまひろが手を貸したのだから、そりゃ腹が立つ。伊周も、まだ何かやらかしそうで安心できない。謀に巻き込まれなければいいのだけど。


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ぶんぶんどー
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