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【詩】雫

ハートウォーミングなテレビ番組
愉快なシーンで声を上げて笑い
心揺さぶられるシーンで感涙にむせぶ
それは無意識にしていたこと
ドアを開けた別室の君を
気にもせずに

君は微笑みながら言う
「笑ったり泣いたりできる
素敵な番組に出会えてよかったね」
心が温かくなる
同時に気づかされる
君の存在を意識せずにいたことに


それは10歳になるかならないかの頃
アニメ番組のストーリーに心打たれ
涙を流しながら噛み締める余韻
そんな私を見て母は嗤った
「なんね、あんた泣きよっとね」と
子供のくせしていっちょ前に、という顔で

表情を消し「別に」と言い捨てての決意
この人の前では豊かな感情を見せまい、と
もう馬鹿にさせないために自身に定めた掟は
ただの足輪が己を縛る重い足枷と化すように
気がつけば他者の目を意識し
感涙を見られることを恥じ恐れる歪みへと


蘇る子供時代の記憶
他者の存在を意識せずに感涙する今
気づけば重い足枷はなくなっていた


長い時をかけて絶えず寄り添い
心を解きほぐしてくれた君
その眩しい光に目を細め口角を上げてみせる






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瑳月 友(さづき ゆう)
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