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掌編怪談

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自作の掌編怪談のまとめ
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2023年6月の記事一覧

掌編怪談「ケイドロ」

学活の時間

学期末と言うこともあり、レクリエーションと称してケイドロをやることになった

30人で行うケイドロは大いに盛り上がった

泥棒が全員捕まったので、警察を交代して2戦目に突入した

泥棒の私は早々に捕まり、牢屋に連行された

だが、進む方向がおかしい

捕まったら朝礼台の上で待機なのに、向かっているのは体育館

私は私でおかしな状況なのを頭では理解してるのに、素直に従っている

私はそ

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掌編怪談「サウナ」

近所の銭湯に来た時はサウナに入ると決めている

扉を開くと熱気が体を包み込む

先客が一人いる

しばらく経っても出る気配がない

そのため勝手に我慢比べを始めた

15分程経過したが、もう限界だ

敗北を認め、サウナを後にする

そこからは純粋にお風呂を堪能し、最後にまたサウナに入った

するとさっき勝負した人がいた

かなり時間が経っているので、入りっぱなしってことはないだろう

今度こそと気

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掌編怪談「瞬き」

瞬きをすると白い何かが見えるのに気がついた

病気を疑ったが、病院で異常はないと言われた

それでも見えるものは見える

セカンド・オピニオンでも結果は変わらない

生活に支障がないので気にしないことにした

見えるようになってから半年ほど経った頃

白いのが前より大きくなっているのに気がついた

再度病院に行くも分からずじまい

それからも少しずつ大きくなる

そのため半年に一度は病院で見て貰う

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掌編怪談「火災」

マンションで火災が発生した

上層階の住民が逃げ遅れ、6名の住民がベランダで救助を待っている状態

その為、はしご車による救助が行われることになった

隊員を一人乗せ、リフターが上昇する

バスケットがベランダに接近すると、隊員が住民に声をかける

だが、住民は動く素振りをみせない

しばらくやり取りをしている様子だったが、隊員が突然バスケットから飛び降りた

ベランダに侵入しようとして落ちたので

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掌編怪談「靴下」

何で寝る時に靴下穿くの?

友達とのお泊まりの時に聞かれ

冷え性だから足を冷やさないようにね

と咄嗟に答えたが、これは嘘

靴下を穿かずに寝ると、何かに足の裏を舐められる

そのせいで夜中に目が覚めてしまう

舐められている時に足元を見ても何もいない

朝日が昇るまでそれが続くので、ずっと睡眠不足だった

そんなある日、旅行から帰ってきて疲れていた

そのため服を着替えず、靴下も脱がずすぐに眠

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掌編怪談「死ねない部屋」

死ねない部屋の噂を聞き、怪談好きの私はその部屋を借りた

借りた人は一週間もたずに逃げるらしい

引っ越し当日、荷運びだけで一日が終わり布団を敷いて眠りについた

夜中に突然体を強く揺さぶられ、驚いて目を開けた

見知らぬ男が泣きながら私を揺さぶり、必死に「死ぬな」と叫んでいた

掌編怪談「窓」

仕事中、目が疲れたので窓の外に目を向ける

24階からの景色は壮観だ

と言いたいが、見えるのは隣接する高層ビルのみ

高層ビルが建ち並ぶエリアなので無理もない

今日は風が強いのか

白い何かが宙を舞っているのが見える

何となくその白い何かの行方を目で追う

ビル風に煽られたのか、すごい勢いで目の前の窓にぶつかってきた

意外と重量があるようで、ドンと鈍い音を鳴らした

ビニール袋のように見え

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掌編怪談「ベッド」

疲れた体を引きずり、なんとか帰宅した

風呂に入るのも服を着替えるのも億劫なので、そのままベッドにダイブする

倒れ込んだ先にマットレスの柔らかい感覚はなかった

硬いものに全身を打ち付け、痛みに悶絶する

体を起こそうとすると、今度は後頭部を何かに打ち付けた

後頭部をおさえ、痛みが引くのを待つ

うつぶせのまま現状を確認する

どういうわけか、俺は今ベッドの下にいるらしい

ベッドをすり抜けた

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掌編怪談「蜘蛛の巣」

暖かくなってきた影響か

最近よく蜘蛛の巣に引っ掛かる

鬱陶しいのでその都度払うが、目には見えず粘性もあるのでそこそこ手間だ

払ったばかりなのに、また腕に絡み付いた

払おうとした瞬間、思い切り腕を引っ張られた

転んだが痛みはない

何事かと顔を上げると目の前に俺の背中がみえる

わけもわからず眺めていると、何かが俺の横を通り過ぎた

その何かはスッと俺の体に入り込むと、こちらに振り向いた

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掌編怪談「テニス」

残業のため、終電での帰宅となった

家まであと少しと言うところで何か聞こえてくる

近所にはテニスコートがあり、音はそこから聞こえるようだ

薄暗いコートに人影があった

営業はとっくに終えているのに何事かと見ていると気づいてしまった

ラリーの応酬をしているのに人影が一つしかない

テニスコートに壁はなく、あるのはフェンスのみ

フェンスではあんなに風にボールが返っていくのはおかしい

人影はコ

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掌編怪談「魚」

川に架かる橋を渡っている際

ふと川に目をやると川面に魚が浮かんでいた

食われたのか、浮いていたのは頭だけ

魚の種類は分からない

弱肉強食

そんな言葉を思い浮かべながら何となく注視していると、鳥が魚の頭に向かって飛んでいった

水面まであと少し

そう思った刹那、川面を何かが跳ねた

目を疑った

頭だけのはずの魚が跳び跳ね、鳥を咥えたかと思うと川に沈んでみえなくなった

呆気にとられ、川

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掌編怪談「懐中電灯」

暗い場所で懐中電灯の光を顔の下から照射する

誰もがやったことのある遊びだ

息子にそれを披露すると初めは怖がっていたが自分もやりたいと言い出した

息子が懐中電灯で顔を照らす

息子の顔が見知らぬ女性の顔になっていた

光や影の影響に収まらないほどの変化に驚いた俺は息子から懐中電灯を取り上げる

息子は怒っていたが無理やり寝かしつけた

その日の出来事は、何故か頭から離れることはなかった

それ

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掌編怪談「マタニティ」

妊娠はしていないが楽だからという理由で普段からマタニティを着ている

マタニティは普通の服と違い、妊娠期間しか身に付けない

そのため綺麗な物が多いので、いつも古着屋で購入している

最近どうもお腹の調子が悪い

ガスが溜まっている感じがするのにおならが出ない

しばらくすると、今度はお腹の中で何かが動くような感覚がある

この事を友人に相談すると

あんたそれ妊娠してんじゃないの?

と言われた

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掌編怪談「空気」

富士山の空気が入っている缶詰めをお土産に貰った

前にも空気缶詰めを貰ったが、特に面白い事は起こらなかった

この手の商品には記念品以上の意味はないと言うのが持論だ

そんな事を思いつつも、折角なので缶を開ける

プシュッと空気の漏れる音がするがそれだけだ

缶をゴミ箱に捨て、ゲームを始めた

しばらくして肌寒さを感じたので冷房を切り、シャツを羽織る

だが寒さは強くなる一方だ

仕方ないので珈琲

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