掌編怪談「瞬き」

瞬きをすると白い何かが見えるのに気がついた

病気を疑ったが、病院で異常はないと言われた

それでも見えるものは見える

セカンド・オピニオンでも結果は変わらない

生活に支障がないので気にしないことにした

見えるようになってから半年ほど経った頃

白いのが前より大きくなっているのに気がついた

再度病院に行くも分からずじまい

それからも少しずつ大きくなる

そのため半年に一度は病院で見て貰うようにしていた

何度調べても脳にも目にも異常はない

精神科を勧められたが精神は関係ないと思い、行かずにいた

見え初めてからどれくらい経ったのだろうか

白いのがかなり大きくなっていた

そのお陰で思い出したことがある

卒論に追われ、徹夜で作業していた大学四年の冬のこと

卒論を提出した帰りのバスの中

ボーッと見ていた窓の外に違和感を覚えた

何かと思い、意識を向ける

てるてる坊主の様に全身が真っ白い何かが、街路樹に隠れながらこっちを見ていた

それは街路樹一本につき一体いるようで、並木道を抜けるまでずっと見られていた

当時は疲れによる幻覚だと思っていたが、瞬きで見える白いのは街路樹のと瓜二つ

今は精神科への受診も検討している

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