掌編怪談「サウナ」
近所の銭湯に来た時はサウナに入ると決めている
扉を開くと熱気が体を包み込む
先客が一人いる
しばらく経っても出る気配がない
そのため勝手に我慢比べを始めた
15分程経過したが、もう限界だ
敗北を認め、サウナを後にする
そこからは純粋にお風呂を堪能し、最後にまたサウナに入った
するとさっき勝負した人がいた
かなり時間が経っているので、入りっぱなしってことはないだろう
今度こそと気合いを入れる
頭の中でゴングが鳴り、リベンジマッチが始まった
とは言えテレビのない狭いサウナではやることがない
ただただ熱さに耐え、汗を拭う
そう言えば対戦相手は座り直したり、汗を拭ったりをしていない
よく見ると汗をかいていない
熱中症を疑い、声をかける
汗が出ていませんが大丈夫ですか?
すると彼はゆっくりとこちらを見た
僕ね、寒いからサウナに来たんです
なのに全然暖まらないので困ってるんですよ
ずーっとここにいるのに何故でしょうか
脱水によるせん妄だろうか
一度外に出ましょう
そう言いながら立たせようと体に触る
手が体を通り抜けた
あなたは暖かいですね
よければぼ
全てを聞き終わる前に急いでサウナから出た
扉に付いてる小窓から中を覗くが、既に人影はなくなっていた
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