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ぐりとぐらのケーキ*Bolo de Fubá

初めに誤解の無いよう記しておくと、これは世に言う「ぐりとぐらのケーキ」のレシピを試した話ではないよ。

ブラジルの Bolo de Fubá という、訳すと「トウモロコシ粉のケーキ」を作った話。トウモロコシ粉シリーズに入る記事でございます。

エッセイ系の、感想やら語りの入った とあるレシピを試した記事です。純粋なレシピを探している方はご注意を。


ブラジルのお菓子レシピの問題

トウモロコシ粉を使ったレシピを検索していると、ブラジルのお菓子で面白そうなのが結構出てくる。ただし。問題がいくつかあった。

まず「これは!」というレシピを見ると、どれもこれも練乳の使い方が半端ない。ココナツもね。

ココナツはともかく、ただでさえ練乳の量だけでも相当なのに、その上さらに砂糖をしみなく使う。おまけに表記が練乳1缶とか書いてあって、1缶て どの大きさなのよーと突っ込まずにはいられない。

こちらの都合

次にこちらの事情。冬眠中の熊と化して17kg増えた。更にトウモロコシ粉と出会い甘味を作るようになり、砂糖を抑えたり蜂蜜に置き換えたりしたけれど、過食症には何の意味もなかった。

深夜に焼いた直径24cmのケーキが朝にはワンホール無くなっているなんていうのは珍しいことではなく、よってトウモロコシ粉との出会いから一月でプラス5kgとなった。計22kg増だよ。子供一人しょってるようなものじゃない。

練乳っておいしいよね。練乳自体は大好きなんだよ。ただ使う量とこちらの体重のため、却下するしかなかった。それに練乳買うなら、まともな食べ物を買えという至極真っ当な理性も幸い働いた。

そしてレシピの好みの問題もあった。元々、買わねば手に入らぬ材料が沢山あって、しかもそれぞれ少量しか使ってないものは敬遠する傾向があった。

あと使う量が半端なもの、例えば生クリーム50ccや、表記が大雑把なもの、「適量」とか「コップ1杯半」なども同様である。

余談だけど、フランスのプラスチックに入ってるヨーグルトって一つ125gなのね。印刷された成分表記の言語を見るに、フランスだけじゃなくEU圏全体かも。ギリギリまで中身が入ってるわけじゃないから、開けると空間もある。

んでこの空間のあるヨーグルト容器を計量の基本にしてるレシピが非常に多い。小麦粉◯杯、砂糖1杯半とか。練乳1缶もこういう風に、現地の人にはそれだけで十分通じるものなんだろう。

ズボラな上に几帳面な私は困惑してしまう。こういうのは難しいレシピであった。計量を考えるだけで疲れてしまう。もっと気楽に、レシピにあるようにすればいいだけなんだろうけどね。

Bolo de Fubá に魅かれた理由と問題

んで、何で Bolo de Fubá なのかって、有りがたいことに練乳を使っていない。

いくつか種類があるようで、この下の写真のように見た目からして、そして材料の分量も大きく違う。左はブラジル料理レシピ集さん、右はKorie0627さんから拝借した。

左はブラジル料理レシピ集さん、右はKorie0627さんから拝借

左のは今まで作ったのと大きく違い、軽く柔らかいケーキに見える。コメント欄にもふわふわとある。こちらに決めた。

だが分量が計量カップ基準で、1杯やら1杯半やら表記されている。どのサイズか分からないコップじゃなく、計量カップなのがまだ救いだよ。

ブラジルのお菓子のレシピってこういう表記が非常に多い。これがネックとなって、興味はもの凄くあったもののトウモロコシ粉のケーキとしては3つ目となった。

あ、ここで「3つ目?一つ抜けてない?」と突っ込んだあなた、凄い!正解です。記事を色々読んで下さってありがとうございます。本当、嬉しいです!2つ目のもいつか書きまーす。

ブラジルじゃ恐らく多くの人がコップや計量カップを基準に作って食べているのだ。おおらかな国民性もあるのかもしれないけど、逆に言えば、適当に量って問題ないのだ。庶民的なお菓子なんだろう。

すりきり一杯こうやって…などとやらないことにした。適当でいんだよ、適当で。初めて作るものだし、食べたこともないから完成品が正解かどうかも分からない。けど、やってみることにした。

レシピ

・トウモロコシ粉 1カップ
・薄力粉     2カップ
・サラダオイル  1カップ
・牛乳      2カップ
・砂糖      1と1/2カップ
・たまご     3個
・ベーキングパウダー

ブラジル料理レシピ集さんより引用

試作

これも倍量で作るか悩んだけれど、カップ1杯の粉を器に入れると量が予想外にあったのでそのまま使うことにした。

計量は簡単なようで難しい。途中まではバサバサ入れていけばいい。けれど、入れていくとどうしても山のように一ヶ所が高くなって、これだけ山になってりゃ大丈夫だろうと、トントンとならしていくとまだ1cm近く入れられそう。

周囲をうめるように入れていくと砂遊びをしてるみたい。妙な懐かしさに浸る。中々一杯にならない。

砂糖は2番目に作ったトウモロコシ粉のケーキと同じく60gにした。ベーキングパウダーの量が書いてないあたり、ブラジルらしいと感じてしまう。4gにしてみた。

で、これ、結果から言うと今まで作ったケーキの中で一番簡単で楽。

玉子を卵白と卵黄に分けて、砂糖を投入しながら卵白を固く泡立てるだけと言っても良い。残りの材料を器に全部入れて、ゆっくりかき回すだけでいい。

量るときも粉類からやって液体を後にすれば、計量カップ一つで済む。ちなみに粉類振るってないよ。卵白を加える前にダマを消すために少々泡だて器で混ぜた方がいい。

それだけ。

本当にズボラ向き。

こんな簡単なケーキ、人生初。

食わず嫌いもとい、やらず嫌いじゃなく挑戦してみて良かったー。卵白を加えた状態を見て、次からはベーキングパウダー無しでいけそうと判断。実際いけた。

生地を入れると高さ5cm、直径24cmの型ギリギリ。そして例の蓋をして焼きに入る。オーブン無いから

初めて作ったときは生地が型ギリギリで、焼いてる途中にデロデロと吐き出てくるんじゃないかと嫌な予感がした。けれど、とても良い子で膨らむだけで溢れ出すことはなかった。倍量で作らなくて良かった〜。

しかも軽いケーキにありがちな、時間が経つとしぼむタイプなので周囲にナイフを入れる必要がない。放っておけば勝手に剥がれてくれる。ありがたやありがたや。本当によく出来たケーキだ。

左:しぼんで隙間が出来てるのが分かる 右:後述のプラリネを使って焼いた為、所々ピンクになっている。スポンジ状ではない

ぐりとぐらのケーキ

何でぐりとぐらのケーキかって?初めて作って蓋をとったとき、ああ!っとなった。

使った型のせいもあり、蓋を取ったらふんわりぐりとぐらのケーキが現れた!

そう見えたんだよ。だから私の中ではぐりとぐらのケーキと改名した。だってどのレシピも「トウモロコシ粉のケーキ」って名前なんだもん。これは上下を返さずに火を通した。

試食

このケーキ、ずぼらな点だけでなく食感も面白い。

フライパン式で焼いたからかもしれないけど、上から下へグラデーションで重さが変わる。見た目では均一に見えて分からない。

今までも別立てで卵白を最後に加えた生地を焼いたけど、グラデーションになることはなかった。普通にスポンジ状になっていたんだよ。

フォークを入れると上はシュワシュワ言うくらい軽い。でもメレンゲじゃないんよ。ちゃんと火は入ってる。下は重いといっても、今まで作ったのとは比較にならないくらい軽い。

ゆっくり焼いたから、粉が下に沈んだんだろう。ただし食べるとやはり重くお腹に来る。

凄く不思議な口当たりだ。砂糖も2番目のケーキと同じ60gなのに、仕上がりの体積が違うせいかごくかすかに甘みを感じる程度。甘さも全然違う。

下の方はベイクドチーズケーキのような口当たり。火は通ってるのに湿ってるっていうのかな。

オーブンで焼いている元のレシピの写真とは違い、スポンジケーキとは言えない。玉子は別立てだけど、最終的には一つの生地になってるのに、こんなに上下で食感が変わるケーキは初めてだし、驚いた。

レシピ元の写真を見るに、オーブンで焼いたらサボワケーキのような軽い口当たりのができるのかもしれない。

ブラジル人が私の作ったのを食べたら「これ違う」と言われる気がする。でも私はこのグラデーションとしっとりがすごく気に入った。曲のない淡白な味も良い。

改造

このままでもいいけど、砂糖を少し増量する代わりに既に長期間居座っていたプラリネを加えて焼いてみた。

これがプラリネ。このまま食べようとすると歯が欠けそうなぐらい赤い部分は固い

プラリネって赤い部分が砂糖で固くなってて、中にナッツ類が入ってる。そのままじゃ固くてまず食べられない。でも生地に入れて焼くと溶けて食べられるようになるんだよ。

プラリネを少しだけ加え冷めたもの。しぼんで、特に型の左側に隙間があるのが分かる。

抹茶を入れても良さそう。これもやってみた。最初は10gで。

ベーキングパウダーを入れなくても膨らんでる。とても上品な優しい味で、食べるのを止められず

抹茶をもうちょっと加えても良さそうと、2回目は量を増やした。15g。砂糖も。90gだと甘すぎたので、体重のためにも80gに。

砂糖も少し増量はしながらも抑えているせいか、使っている抹茶のせいか、うっすらと上品なお味に仕上がった。美味しい。いかん、止まらん。危険。魔改造しやすいケーキだ。

簡単に作れる上、大きいケーキにも関わらず、食べやすくてあっという間になくなっちゃうのが難点かな。また太るよ、これ。練乳を避けたのは何だったのか。

最初に作ったコーンフラワーとターメリックのケーキからのインスピレーションで、ターメリックとカルダモンを同量加えてみるという暴挙にも出た。が、これまたとても美味しかった。

焼き立ては型から数センチの高さがある。ターメリックとカルダモンを移植、これまたおいしい!

オリジナルと違い、崩れないのが寂しいくらい。どちらも甲乙つけがたい。今回はカルダモンを少し抑えたら、沢山入れているようで実は少な過ぎたのか、存在感が無くなってしまった。調合頑張るぞ!

このケーキ、とにかくズボラで適当な計量で出来るのが最高。なんか開眼したよ。

ありがとう

最後に。この記事の公開直前に、山脇百合子さんに続き「ぐりとぐら」の作者である中川李枝子さんの訃報が入った。小さい頃沢山読んで、今も大切にシールを取ってある。タイトルのもそう。楽しい時間と素敵な思い出をどうもありがとうございました。

追記

こちらのケーキを作ったときに、ターメリックとカルダモンを移植。2倍量で作って、ターメリック6g、カルダモン1g 強だと両スパイスの均等がすごく良かった!どちらの味も香りもし、2つのスパイスが絶妙に入り混じり、更に塩がアクセントとなってて、とってもおいしく出来ました!

レシピ記事

トウモコロシ粉シリーズ

ルー邪道シリーズ

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