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「棚差し本」という「職人」
西加奈子さん『夜が明ける』(新潮社) が入荷。15歳の時にアキと出会った「俺」は、普通の家庭で育った自分、そして母親にネグレクトされていたアキと、互いにとってかけがえのない存在になっていく。二人は大人になり、理不尽な世界に少しずつ心も身体も壊れていった。(青木)https://t.co/GUfovpYWhd pic.twitter.com/L11aDxDKoH
— 青山ブックセンター本店 (@Aoyama_book) October 18, 2021
↑は私の職場にも大量に入ってきました。文芸担当とレジを代わり、すぐに品出しするように促したら案の定売れました。さすがは西加奈子さん。熱心なファンがついています。
「棚に出した本がすぐに売れる」のは書店員冥利に尽きます。愛読書や「面白そう」だと感じた書籍であればなおさらです。
あと「他の系列店ではそうでもないのに、なぜかウチでは売れる本」を見つけるのも仕事の醍醐味です。RPGにおける「隠しアイテム」を発掘するような楽しみがあります。私の担当するビジネス書では↓が代表格。
2年前の1月に出た本です。ただ普通は面陳や平積みにする方が動くのに、これはなぜか棚差しが有効なのです。理由はわかりません。私の職場だけかもしれない。そのことに気づいてからは1~2冊だけ置き、なくなったら注文というやり方をしています。
この「棚差しにした方が売れる」現象が起きているビジネス書が、実はもう1点あります。
発売は昨年1月。ウチの店には入っていなかったのですが、青山ブックセンターで見つけて「これは」と思って仕入れました。面陳時はさほど動かなかったのですが、棚差しにしたらコンスタントに売れるようになりました。入門書的な意味合いで若い人が手に取ってくれている印象を受けます。
以前にも書きましたが、大型書店で売れる本は平積みよりも棚差しの方が多いのです。全国的な話題書を切らさず、目立つ場所にデンと積むのはもちろん大事。でも各店舗ごとの客層に合った「息の長い棚差し本」を見出して棚に忍ばせるのも、数字を作るうえで同じくらい重要です。
強い野球チームにはアベレージヒッターや長距離砲以外にもバントの名人や守備の名手、代走のスペシャリストが必ずいます。書店も同じ。いいお店には各棚で渋い仕事をして点を稼ぐ職人みたいな本が必ず存在するのです。
ホームランだけが点を獲る手段ではありません。こういう良書をどんどん見つけ、ご紹介できる書店員でありたいです。
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