「大型書店のカオス」と「ガチ専門店」
大型書店の多くは、商業施設の中に売り場を構えています。
ゆえに館が「○千円以上の会計で△円値引き」タイプのクーポンを配布し、併せてポイントアップキャンペーンを始めたら、否応なしにカオスの渦へ巻き込まれてしまう。
とにかく異様に混みます。主に売れるのは雑貨、文房具、子ども用の絵本や図鑑、コミック、あとは教科書ガイドや小学生向けのドリルなどでしょうか。
土日祝日は子どもたちが大騒ぎし、いろいろやらかしてくれます。先日は備品が壊されそうになりました。緊急事態宣言下でスーパーマーケットが「遊興施設ではありません」みたいな声明を出していましたが、気持ちはわかります。
問い合わせも普段より多いです。検索機を使ってから来てくれる人はごく少数。しかも「取り寄せになぜそんなに時間がかかるのか」と食い下がってくる。世界有数の大企業であるアマゾンを業界の標準だと考えているのかもしれない。あそこの倉庫で働いた人のルポをぜひ読んでほしいです。「お客様は神様です」を地でいくサービスの裏で何がおこなわれているか。
こういう日々が続くと、本当に本を好きな方々(老若男女問わず)だけをターゲットに据えた「ガチ専門店」としての新刊書店で働きたくなります。少なくとも、私がいままでに勤めた本屋はそうではなかった。
篠崎の「読書のすすめ」は、爆発的に売れた又吉直樹さんの芥川賞受賞作「火花」を置かなかったと聞きます。いいじゃないですか。「火花」は好きな作品だけど、そういう硬派な店があってもいい。
数字のことだけを考えるなら、売れるものは何でも置いてぐちゃぐちゃに混んでいた方がいいのでしょう。でも本屋ってそういう場所じゃない気がする。もちろん気軽に足を踏み入れてほしい。ただ一方で、知的好奇心を探求できる落ち着いた空間としての書店に憧れを抱いているのも事実なのです。