いま見たいのは「無血革命」
嬉しい誤算です。
今年鬼門のハマスタで勝ち越せるとは。2019年のクライマックスシリーズでも感じましたが、短期決戦で情を捨て、ひたすら勝負に徹した矢野監督は勘が冴え渡り、決断も早い。西純矢投手を2日連続で2イニング投げさせ、新クローザーの湯浅投手も回跨ぎ。いずれも大きな勝因となりました。
しかし。
「ペナントレースで負け越したチームが日本シリーズに出るのはおかしい」
「もし日本一になってしまったら、ペナントレースの価値はどうなるのか」
これは2004年にいわゆる「プレーオフ」制度が導入されて以来、ずっと問題視されてきたテーマです。一理、いや二理も三理もある言い分で、私自身同じ疑問を長年抱いています。せめてクライマックスシリーズに出られるのはリーグ戦2位までにするべきだと。
ただ議論は議論として、阪神は敵地で2位DeNA相手に厳しいゲームを闘い、どうにか突破したわけです。だったらもう余計なことは考えず、文字通りの「下剋上」を果たすために神宮でヤクルトに挑んでほしい。いまはそう考えています。
「ペナントレースで負け越したチームは日本シリーズに出てはいけない」「日本シリーズで優勝するべきではない」
ちょっと待ってください。そんなの誰が決めたんですか?
いまの臆病すぎる日本に喝を入れるには、常識的な既成概念をぶち壊すぐらいでちょうどいい。たとえば血縁や高学歴はなくても庶民の暮らしをよく知る政治家が、利権構造に甘えた二世やエリートを蹴落としてもいい。私の働く書店業界なら、パッとしない店長や正社員ではなく志を持った非正規社員が実権を握る店があってもかまわない。
大袈裟に言うなら「前例や前提に囚われぬ無血革命」です。そんな光景をプロスポーツの世界で見てみたい。もちろんいまの阪神がヤクルト相手に4勝するのは相当難しい。だからこそ応援します。半ば我が事として。一縷の淡い望みと共に。